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最終確認:2026年10月3日
農薬登録情報:独立行政法人農林水産消費安全技術センター
技術情報:日産化学株式会社技術資料ほか
オラクル粉剤は、アミスルブロムを有効成分とする、あぶらな科野菜の根こぶ病菌の遊走子を直接殺菌するFRACコード21のスルファモイルトリアゾール系殺菌剤です。土壌に混ぜて使う粉剤で、根こぶ病を防ぎながら土壌中の菌密度を減らし、ばれいしょの粉状そうか病や稲の苗立枯病などにも使えます。
根こぶ病菌の休眠胞子から出てきた遊走子を、根に感染する前に直接殺菌します。休眠胞子を眠らせるのではなく、出てきた菌をたたくため、作付けを重ねるごとに土の中の菌を減らしていけます。
あぶらな科根こぶ病特効剤、遊走子を直接「殺菌」
キャベツ・はくさい・ブロッコリーなどあぶらな科野菜の根こぶ病に、感染のもとになる遊走子を直接殺菌して効きます。従来の剤は休眠胞子を眠らせたままにする「静菌」で感染を防ぎますが、オラクルは出てきた遊走子をたたく「殺菌」で根こぶの形成を防ぎます。
土壌の菌密度を下げ、体系処理でより高い予防効果
遊走子をたたき続けることで、使うたびに土の中の根こぶ病菌を減らしていけます。菌が多い畑では、セル苗への灌注剤(オラクル顆粒水和剤)と組み合わせると、主根と側根の両方を守れてより高い予防効果が得られます。
根こぶ病以外の土壌病害にも
ばれいしょの粉状そうか病、はくさいのピシウム腐敗病、稲の育苗箱の苗立枯病(ピシウム菌)とムレ苗防止にも使えます。
| 作物 | 適用病害虫雑草 | 希釈倍数・使用量 | 使用時期 | 使用回数 | 使用方法 |
|---|---|---|---|---|---|
| かぶ | 根こぶ病 | 30kg/10a | は種前 | 2回以内 | 全面土壌混和 |
| カリフラワー | 根こぶ病 | 20kg/10a | 定植前 | 2回以内 | 作条土壌混和 |
| カリフラワー | 根こぶ病 | 30kg/10a | 定植前 | 2回以内 | 全面土壌混和 |
| キャベツ | 根こぶ病 | 20kg/10a | 定植前 | 2回以内 | 作条土壌混和 |
| キャベツ | 根こぶ病 | 20kg/10a | は種前(苗床) | 2回以内 | 全面土壌混和 |
| キャベツ | 根こぶ病 | 30kg/10a | 定植前 | 2回以内 | 全面土壌混和 |
| ザーサイ | 根こぶ病 | 30kg/10a | 定植前 | 2回以内 | 全面土壌混和 |
| はくさい | ピシウム腐敗病 | 30kg/10a | 定植前 | 2回以内 | 全面土壌混和 |
| はくさい | 根こぶ病 | 20kg/10a | 定植前 | 2回以内 | 作条土壌混和 |
| はくさい | 根こぶ病 | 30kg/10a | は種前又は定植前 | 2回以内 | 全面土壌混和 |
| ばれいしょ | 粉状そうか病 | 20kg/10a | 植付前 | 1回 | 全面土壌混和 |
| ブロッコリー | 根こぶ病 | 20kg/10a | 定植前 | 2回以内 | 作条土壌混和 |
| ブロッコリー | 根こぶ病 | 30kg/10a | 定植前 | 2回以内 | 全面土壌混和 |
| 稲(箱育苗) | 使用目的ムレ苗防止 | 育苗箱(30×60×3cm、使用土壌約5L)1箱当り10~15g | は種前 | 1回 | 育苗箱土壌に均一に混和する。 |
| 稲(箱育苗) | 苗立枯病(ピシウム菌) | 育苗箱(30×60×3cm、使用土壌約5L)1箱当り10~15g | は種前 | 1回 | 育苗箱土壌に均一に混和する。 |
| 茎ブロッコリー | 根こぶ病 | 30kg/10a | 定植前 | 2回以内 | 全面土壌混和 |
| 非結球あぶらな科葉菜類 | 根こぶ病 | 20~30kg/10a | は種前又は定植前 | 2回以内 | 全面土壌混和 |
FRACコード:21(スルファモイルトリアゾール系、QiI〔複合体III:シトクロムbc1のQi部位の阻害〕)
アミスルブロムは、病原菌のミトコンドリアの電子伝達系で複合体IIIのQi部位を阻害する殺菌成分で、特に遊走子のう・遊走子に対する殺菌活性が高いとされています(若山 2012)。FRACは、この系統の耐性リスクを「不明だが中〜高と想定」し、耐性管理が必要としています。
技術資料は、従来の根こぶ病殺菌剤は土壌中の休眠胞子を眠らせて遊走子を放出させない「静菌」作用で感染を予防するとされるのに対し、オラクルは休眠胞子を眠らせたままにせず、放出された遊走子を直接「殺菌」する作用を持つとしています。根こぶ病菌の生活環では、第1次遊走子と第2次遊走子の段階に作用します。
日産化学の試験(2010年)では、アミスルブロムの休眠胞子発芽阻害率は0.1ppmで52%、0.4ppmで48%、2.0ppmで83%で、技術資料は休眠胞子の発芽阻害効果は弱いとしています。若山(2012)も、既存の根こぶ病用殺菌剤が低濃度でも休眠胞子の発芽を強く抑えたのに対し、アミスルブロムは実用濃度でも発芽をほとんど抑制しなかったとしています。
薬剤で処理した土壌に健全なはくさい苗を定植し、すぐそばに根毛感染苗を移植して最初の苗の根こぶ形成を調べた試験で、オラクル粉剤は30kg/10aと15kg/10a(通常薬量の1/2)のいずれでも根こぶ形成は全く見られませんでした。休眠胞子汚染土壌への土壌混和で、第1次遊走子による根毛感染も阻害されることが確認されています。
著者は、第1次・第2次遊走子の感染阻害が根こぶ病防除の主たる作用で、遊走子に殺菌的に作用すると推測しています。
水溶解度が低く土壌吸着性が強いため土壌中での移行性が低く、植物の根から吸収されないため土壌処理による作物残留性が非常に低いとされています。高濃度処理土壌でも作物の薬害発生の危険性は低く、種子に高濃度処理しても発芽に影響しないとされています。
アミスルブロムは1999年に日産化学工業が発見した化合物で、あぶらな科野菜根こぶ病への効果は2004年に確認されました。茎葉散布用のライメイフロアブル(2008年登録)に続き、土壌処理剤としてオラクル粉剤(本圃の全面土壌散布後の土壌混和用)とオラクル顆粒水和剤(セル苗灌注用)が開発され、オラクル粉剤は2010年10月20日に登録されました。
アミスルブロム0.50%の粉剤(類白色粉末45μm以下)で、有効年限は5年です。30kg/10aは有効成分150g/10aに当たります。
技術資料の委託試験(2005〜2008年、全面土壌混和)は、はくさい8試験、キャベツ7試験、ブロッコリー9試験で、多くの試験で無処理に対する効果が最上位の評価でした。一方、甚発生の条件では効果が低い評価の試験が各作物に1件ずつありました。薬害は全試験で認められませんでした。
技術資料と若山(2012)の温室内モデル試験(2作期を再現)では、2作後の土壌中の菌密度(胞子/g土壌)はアミスルブロム区5,670で、無処理(無栽培)12,150や既存2剤(いずれも12,960)より低く、1作ごとに休眠胞子の約3割が発芽し、出てきた菌がすべて死滅したと仮定した理論値(5,953)とほぼ同じでした。
既存剤は発病を抑えても菌密度は減らしませんでした。全国8圃場の試験でも、アミスルブロム粉剤の栽培後の菌密度は8圃場とも栽培前より低く、栽培前の菌密度Xに対して栽培後は0.57X+1,527という関係でした。著者は、2万5千個/g程度の圃場で2〜3回使うと、その後の菌密度は1万個/g以下に下がることが期待できるとしています。
ポット試験(初期密度92,300胞子/g土壌)では、葉ダイコンのおとり作物を約30日栽培した後の菌密度が、アミスルブロム粉剤併用で33,400、おとり作物のみで54,700胞子/g土壌で、有意な差がありました。石川県加賀市の圃場(ブロッコリーが根こぶ病の甚発生で収穫皆無、初期密度23,857個/g)では、粉剤30kg/10aとおとり作物の併用区の菌密度は6,276個/g(無処理区22,748個/g)となり、翌春は薬剤防除なしでブロッコリーを栽培できたとしています。
同じ成分のオラクル顆粒水和剤のセル苗灌注(200倍、0.5L/箱)では、はくさいで防除価80.1(甚発生)、キャベツで72.5(甚発生)、ブロッコリーで62.8(多発生)でした。技術資料は、土壌中の菌密度が低い圃場ではセル苗灌注で十分な効果が期待でき、菌密度が高い圃場ではセル苗灌注と本剤の土壌全面処理の体系をすすめています。
技術資料・SDSでは、急性経口・経皮LD50(ラット)は2,000mg/kg超、皮膚刺激性なし、眼刺激性は極軽度〜軽度、皮膚感作性なしとされています。水生生物では、本剤(粉剤)はコイ・ミジンコ・藻類とも1,000mg/L以上で、水生環境有害性は「区分に該当しない」とされています。SDSでは、含有するシリカにより発がん性区分1A、特定標的臓器毒性(反復)区分1(呼吸器系など)に分類されています。
あぶらな科野菜の根こぶ病は20〜30kg/10aを、は種前または定植前に全面土壌混和または作条土壌混和します(作物により異なります)。ばれいしょは植付前に20kg/10a、稲(箱育苗)はは種前に育苗箱1箱当たり10〜15gを育苗箱土壌に混和します。
あぶらな科野菜では本剤2回以内、ばれいしょ・稲は1回です。アミスルブロムを含む農薬の総使用回数は作物ごとに土壌混和・灌注・散布の内訳があります(例:キャベツは8回以内で、苗床での土壌混和2回以内、灌注1回以内、本圃での土壌混和2回以内、散布4回以内)。必ず最新の適用表で確認してください。
砕土をよく行った後、所定量を均一に散布し、土壌と十分に混和してください。降雨直後の処理は混和むらの原因になるため避けてください。作条土壌混和では、根圏に薬剤が混和されるよう、畝に沿って幅20cm以上・深さ10cm以上の範囲の土壌とよく混ぜます。技術資料は、全面土壌混和では深さ10〜15cm程度まで混和し、適湿(土を握ってすぐ崩れる程度)で処理するよう案内しています。
かぶ、非結球あぶらな科葉菜類、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、はくさい、茎ブロッコリー、ザーサイで、は種前または定植前に2回土壌混和する場合は、使用間隔を2か月程度あけてください。
初期に生育抑制を生じるおそれがあるため、苗床表面に均一に処理してください。
散布の際は農薬用マスクなどを着用し、作業後はうがいをしてください。
普通物に区分されています。
FRACコード21(QiI)の殺菌剤です。FRACは、この系統の耐性リスクを「不明だが中〜高と想定」し、耐性管理が必要としています。フランスのぶどうべと病菌では、同じFRAC 21のシアゾファミドに抵抗性の株の一部でアミスルブロムへの感受性がわずかに低下していたとされています(Cherrad et al. 2020)。
根こぶ病は土壌中に休眠胞子が長く残る病害で、殺菌剤だけで菌密度を0にすることはできません。開発元(若山 2012)は、IPMの観点から、土壌の酸性改良や排水対策、おとり作物、抵抗性品種と組み合わせた対策を求めています。オラクル顆粒水和剤・ライメイフロアブルなど同じ成分の剤と合わせて、アミスルブロムを含む農薬の総使用回数を守ってください。
技術資料は、根こぶ病は土の種類や物理性、土壌中の菌密度が発病の主要因で、土壌の酸性改良(pH6.6以上)、排水の改善、殺菌剤の使用を組み合わせた総合防除が重要としています。若山(2012)は、休眠胞子密度が1万個/g土壌以下では生育に大きな影響はないが、1万個/g以上で被害が激しくなり、5万個/g以上の高密度汚染土壌では薬剤だけで十分な防除効果を得るのは容易でないとしています。
アミスルブロムの粒状製剤・液剤の播種条への処理で、根こぶ病の発病度は無処理より有意に低下しましたが、土壌中の休眠胞子密度には有意な差がありませんでした(キャノーラは本剤の登録作物ではありません)。
砕土をよく行ったあと、所定量を均一に散布し、土壌と十分に混和してください。全面土壌混和では、あぶらな科野菜の根が張る深さ10〜15cm程度まで混ぜます。作条土壌混和では、畝に沿って幅20cm以上・深さ10cm以上の範囲の土とよく混ぜてください。土を握ってすぐ崩れる程度の適湿で処理し、降雨直後は混和むらの原因になるため避けてください。
発病が多い畑では、本剤だけに頼らず、体系処理や土づくりと組み合わせてください。技術資料の委託試験では、甚発生の条件で効果が十分でなかった例があります。開発元は、休眠胞子が土1g当たり5万個以上の高密度の畑では薬剤だけで十分な効果を得るのは容易でなく、菌密度を0にすることはできないとしています。メーカーは、前作で発病が多い畑ではセル苗灌注(顆粒水和剤)と本圃の土壌全面処理後混和の体系処理を、根こぶ病対策として土壌の酸性改良(pH6.6以上)や排水改善との組み合わせをすすめています。
いいえ、育苗中に感染した苗は本圃で処理しても発病を止められません。メーカーは、根こぶ病菌に汚染された土や水によって育苗中に感染することがあるため注意するよう呼びかけています。キャベツの苗床では、本剤をは種前に苗床土壌に混和する使い方があります。
はい、組み合わせて使えます。本剤は休眠胞子の発芽を止めないため、休眠胞子の発芽を促すおとり作物(ヘイオーツ、葉ダイコンなど)と併用することで、出てきた遊走子をたたいて菌密度をより減らせます。開発元の石川県の試験では、根こぶ病で収穫皆無だった畑で本剤とおとり作物を併用し、菌密度が無処理の約3割に減り、翌春は薬剤なしでブロッコリーを栽培できました。ただし、おとり作物との同時使用そのものは登録の使用方法ではありません。
メーカーは、効果が約50日間持続するとしています。開発元は、圃場試験での観察結果などから、土壌中で処理後50日間程度効果が続くと考えられるとしています。
あぶらな科野菜では本剤は2回以内で、は種前または定植前に2回土壌混和する場合は、2か月程度間隔をあけてください。アミスルブロムを含む農薬の総使用回数には、土壌混和・灌注・散布の内訳があります。オラクル顆粒水和剤やライメイフロアブルなど同じ成分の剤と合わせて数えてください。
粉剤を吸い込まないよう、散布の際は農薬用マスクなどを着用し、作業後はうがいをしてください。SDSでは、含まれるシリカによる吸入時のリスクが示されています。キャベツの苗床では初期に生育抑制を生じることがあるため、苗床表面に均一に処理してください。
ご使用に際して、製品ラベルに記載された希釈倍率・使用時期・使用回数・収穫前日数を必ず遵守してください。製品ラベルの記載と本ページの記載が異なる場合や薬害や安全使用上の注意などの記載がある場合は、製品ラベルの記載に従ってください。都道府県によってご使用を控えるよう指定されている農薬があるため、お住まいの地域の指針もあわせてご確認ください。河川・水路等への流入および周辺への飛散に注意し、使用後の容器は適切に処理してください。誤って眼または皮膚に付着した場合は、直ちに水で洗い流してください。体調に異常が生じた場合は、医師の診断を受けてください。直射日光および高温を避け、小児の手の届かない場所で保管してください。
