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最終確認:2026年10月3日
農薬登録情報:独立行政法人農林水産消費安全技術センター
技術情報:アグロ カネショウ株式会社技術資料ほか
ダニエモンフロアブルは、スピロジクロフェンを有効成分とする、かんきつのミカンハダニ・ミカンサビダニに長期間安定した効果を示すIRACコード23のテトロン酸系殺ダニ剤です。卵・幼虫に特に高い効果があり、雌成虫の産卵も止めます。びわ・茶のサビダニ類やミカンキジラミにも登録があります。
ダニの体の中で脂質(あぶら)をつくる働きを止めて、成長や産卵をできなくします。処理されたダニは次の脱皮の段階で死に、雌成虫は卵を産めなくなります。
ミカンハダニ・サビダニに長く効き、キジラミ・茶のダニにも
かんきつのミカンハダニ・ミカンサビダニに安定した効果を示し、長期間密度を抑えます。サビダニ類・チャノホコリダニ・ミカンキジラミ(幼虫)、びわのビワサビダニ、茶のチャノナガサビダニにも登録があります。
卵・幼虫に特に高い効果、雌成虫の産卵も止める
卵から成虫まで全ステージに効き、特に卵と幼虫に高い効果を発揮します。薬剤に触れた雌成虫は卵を産めなくなり、産まれた卵もふ化しないため、次の世代が増えるのを断ちます。
既存の殺ダニ剤と交差抵抗性のない独自の作用性
ダニの脂質合成を止めるという独自の作用性(IRACコード23)を持つ殺ダニ剤です。既存の主要な殺ダニ剤との交差抵抗性はないとされ、ローテーション防除に組み込みやすい薬剤です。
| 作物 | 適用病害虫雑草 | 希釈倍数・使用量 | 使用時期 | 使用回数 | 使用方法 |
|---|---|---|---|---|---|
| かんきつ | サビダニ類(ミカンサビダニを除く) | 4000倍散布液量 200~700L/10a | 収穫7日前まで | 1回 | 散布 |
| かんきつ | チャノホコリダニ | 4000倍散布液量 200~700L/10a | 収穫7日前まで | 1回 | 散布 |
| かんきつ | ミカンキジラミ | 4000倍散布液量 200~700L/10a | 収穫7日前まで | 1回 | 散布 |
| かんきつ | ミカンサビダニ | 4000~6000倍散布液量 200~700L/10a | 収穫7日前まで | 1回 | 散布 |
| かんきつ | ミカンハダニ | 4000~6000倍散布液量 200~700L/10a | 収穫7日前まで | 1回 | 散布 |
| さんしょう(果実) | ミカンハダニ | 4000倍散布液量 200~700L/10a | 収穫21日前まで | 1回 | 散布 |
| びわ | ビワサビダニ | 4000倍散布液量 200~700L/10a | 収穫7日前まで | 1回 | 散布 |
| 茶 | チャノナガサビダニ | 2000倍散布液量 200~400L/10a | 摘採14日前まで | 1回 | 散布 |
IRACコード:23(テトロン酸・テトラム酸誘導体、アセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤)
IRAC分類の第23グループはアセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤で、脂質合成・成長調節が主な作用部位です。スピロジクロフェンは、テトロン酸・テトラム酸誘導体のサブグループに例示されています。環境省の資料でも、スピロジクロフェンはダニ類の脂質合成を阻害することで殺虫活性を示すと説明されています。
開発元の研究者によるNauen(2005)によれば、スピロジクロフェンは全発育ステージに活性があり、葉面散布後7日のLC50値は卵から雌成虫まで0.1〜1 ppmの範囲とされています。散布された移動ステージは次の静止期で死亡し(処理された幼虫は第1静止期で死亡するなど)、ステージ間の周期が短いため、散布後24〜48時間以内に中程度の速さで効果が現れます。
雌成虫がふ節で処理面に触れるだけで産卵能力が強く低下し、処理された雌成虫は産卵できずに体内に卵がたまり、数日後に死亡することがあります。技術資料でも、ミカンハダニで「処理された卵はふ化しない」「処理された雌成虫から産まれた卵も変形してふ化しない」「雌成虫は卵が体内に蓄積して体が膨らむ」という症状が顕微鏡写真で示されています。
処理した雌成虫では脂質含量が有意に低下し、新たな脂質の生合成が阻害されていることが示されました。モデル昆虫を使った¹⁴C-酢酸の取り込み試験や酵素解析で、スピロジクロフェンと誘導体がナノモル濃度でアセチルCoAカルボキシラーゼを選択的・強力に阻害することが示され、著者はこれがハダニの中毒の原因となる標的である可能性が高いとしています。神経毒性はなく、ダニの発育に作用する薬剤です。
接触で作用し、浸透移行性はありません。¹⁴C標識体を用いた試験では、葉のクチクラへの浸透は1%未満で、散布付着量の95%超は表面ワックスとともに除去できました。葉内に入ったわずかな量は速やかに活性の低いエノール体に分解されますが、葉の表面の付着物は安定でした。有効成分の水溶解度が低く(0.05 mg/L)、分配係数が高い(logPow 5.83)ことと整合する性質です。
スピロジクロフェン(開発コードBAJ2740、海外での商品名Envidor®)は、1990年代にBayer CropScience社で見つかったテトロン酸誘導体です。除草剤の合成研究の中で、構造を変えた化合物がアセチルCoAカルボキシラーゼに作用する新しい除草剤系統であることがわかり、さらにそのアシル化体にナミハダニへの殺ダニ活性が見つかりました。
作物への安全性とリンゴハダニへの活性を両立させるため、骨格と置換基の最適化を重ね、2,2-ジメチル酪酸エステルが開発化合物に選ばれました。除草活性から殺ダニ活性へ「適用の転換」が起こった例とされています。国内では2003年8月28日に登録されました。
白色粉末、無臭。分子式C21H24O4Cl2、分子量411.3、密度1.29 g/cm³(20℃)、融点94.8℃、蒸気圧3×10⁻⁷ Pa(20℃)、水溶解度0.05 mg/L(20℃、pH4)、logPow 5.83(20℃、pH4)。製剤は類白色水和性粘稠懸濁液体です。
2003年、バイエルクロップサイエンス結城中央研究所の試験では、LC50値(ppm)は卵1.9、幼虫0.7、若虫7.4、雌成虫13.5でした。技術資料は、全ステージに活性を示し、特に幼虫・卵に高い効果を発揮するとしています。
ダニエモンフロアブル75 ppmにミカンハダニ雌成虫を接触させた時間別の未ふ化卵率は、2時間17.5%、6時間56.7%、10時間82.6%、24・30・48時間ではいずれも100%でした。40 ppm処理区では、処理後0〜2日目のいずれでも24時間以内の産卵数が無処理区より少なくなっていました。
15℃・25℃・30℃で処理した試験(成虫)では、25℃・30℃区は処理後3〜4日目ごろから死亡率が上がり8〜9日目ごろにほぼ100%に達したのに対し、15℃区は7〜8日目ごろまでほとんど上がらず、14日目に25℃・30℃区と同程度に達しました。技術資料は、低温下では遅効的なので、温度の高い8月下旬〜9月上旬の散布が効果的としています。
Nauen(2005)は、インゲンマメの葉に散布して乾いた後、表面ワックスを除去した株、水に何度も十分浸した株、何もしない株にナミハダニ雌成虫を放して7日後の効果を調べています。ワックスを除去した株ではハダニが増えた一方、水に浸した株では100%の効果がみられ、著者は、有効成分が表面ワックスに強く結合して水では抽出されないことが優れた耐雨性の理由としています。
各種公的試験・社内試験で、みかん類(青島温州、興津早生、宮川早生、ポンカン等)、ネーブル、清見、不知火、宮内伊予柑、土佐文旦、甘夏、八朔、日向夏、ユズ、キンカン、びわ(長崎早生、田中)などの品種・系統で薬害は認められていません。
かんきつのミカンハダニ・ミカンサビダニは4000〜6000倍、その他の対象は4000倍、茶は2000倍(200〜400L/10a)で散布します。果樹の使用液量は200〜700L/10aです。使用時期は、かんきつ・びわが収穫7日前まで、さんしょう(果実)が収穫21日前まで、茶が摘採14日前までです。本剤の使用回数は全作物で1回で、スピロジクロフェンを含む農薬の総使用回数も1回です。
貯蔵中に分離することがあるため、使用前に容器をよく振ってください。使用量に合わせて薬液を調製し、使いきってください。低温時は効果の現れ方が遅いため、気温の高い時期の散布が効果的です。ミカンキジラミには、成虫には効果が劣るため幼虫を対象に散布してください。
蚕では、200 ppmの水溶液を散布した桑葉の安全日数は1日です。ハチ類(セイヨウミツバチ、マルハナバチ、マメコバチ)への影響はほとんどありません。天敵のうち、チリカブリダニ(特に卵)とクサカゲロウ類幼虫には影響があるため注意してください。
技術資料では、コイLC50(96時間)1,000 mg/L超(実験可能な最高濃度で無症状)、オオミジンコEC50(48時間)717 mg/L、藻類EbC50(72時間)13.3 mg/Lです。SDSでは水生環境有害性(長期)区分1とされているため、下水道や水路に排出しないでください。
誤飲などのないよう注意し、飲み込んだ場合は直ちに医師の手当てを受けてください。散布の際は農薬用マスク、不浸透性手袋、長ズボン・長袖の作業衣などを着用し、作業後は手足・顔などを石けんでよく洗い、うがいをしてください。かぶれやすい体質の人は取り扱いに十分注意してください。SDSでは、発がん性区分1B、生殖毒性区分2などのGHS分類が記載されています。
適用作物群に属する作物や新品種に初めて使う場合は、事前に薬害の有無を確認してください。
密栓し、直射日光を避け、食品と区別して冷涼な所に保管してください。
普通物に区分されています。
IRACコード23(アセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤)に属する成分です。登録当時の知見では既存の主要な殺ダニ剤と交差抵抗性はないとされていますが、国外ではミカンハダニの抵抗性も報告されています。本剤の使用は年1回(総使用回数1回)に限られており、IRACコードの異なる殺ダニ剤とのローテーションで使ってください。
安田ら(2006)は、沖縄県農業試験場で累代飼育したミカンキジラミに対し、14剤の効果を室内で調べています(スピロジクロフェンフロアブル〈30%〉4,000倍)。
著者は、かんきつの殺ダニ剤として登録されているミルベメクチン水和剤、ピリミジフェン水和剤、スピロジクロフェンフロアブル、マシン油乳剤は、成虫への処理1日後の効果は低いものの幼虫には高い効果を示したとし、ミカンキジラミの齢構成に注意して用いれば防除体系に組み込めると考察しています。本剤の注意事項でも、ミカンキジラミには成虫への効果が劣るため幼虫防除を対象に散布するよう求められています。
Nauen(2005)は、スピロジクロフェンはヘキシチアゾクス、クロフェンテジン、ミトコンドリア電子伝達系阻害剤(ピリダベン等)、アバメクチンなどの既存の殺ダニ剤と交差抵抗性を示さないとしています。当時、世界各地から採集したハダニ系統の反応は非常に均一で、モニタリングで抵抗性はまだ検出されていませんでした。
室内で選抜したナミハダニ系統では、カルボキシルエステラーゼとモノオキシゲナーゼの活性上昇がみられ、著者は、推奨どおり慎重に使えば抵抗性管理の優れたパートナーになるとしています。
その後、Cheng et al.(2022)は、2019年に中国四川省のかんきつ園で採集したミカンハダニが、採集時点で感受性系統の162倍、室内で薬剤による維持を続けた後に712倍の抵抗性を示したことを報告しています。標的のアセチルCoAカルボキシラーゼ遺伝子に変化はなく、P450・カルボキシルエステラーゼの活性上昇とP450遺伝子CYP385C10の過剰発現が抵抗性に関与している可能性があるとしています。
同論文は、米国・ドイツ・ブラジル・中国・トルコ・イランの一部地域でもハダニ類の抵抗性が報告されているとしています。いずれも国外の個体群での結果です。
気温の高い時期の散布が効果的で、メーカーは8月下旬から9月上旬の散布をすすめています。低温では効果の現れ方が遅く、15℃では処理後7〜8日ごろまで死亡率がほとんど上がりませんでした(25℃・30℃では3〜4日ごろから上昇)。ただし、14日後には温度によらず同程度の効果に達しています。実際の散布時期は各地域の防除暦に従ってください。
速効的な薬剤ではなく、効果が現れるまでに数日かかります。散布された幼虫や若虫は、次の脱皮の段階(静止期)で死亡します。発育の周期が短いため、散布後24〜48時間ほどで効果が現れ始めるとされています。処理された雌成虫は産卵できず、体内に卵がたまって膨らみ、数日後に死亡することがあります。
はい、耐雨性に優れています。有効成分は水に溶けにくく、散布後は葉の表面のワックス層に強く付着します。インゲンマメの葉で試験した例では、散布して乾いた葉を水に何度も浸しても、ナミハダニに対して100%の効果が保たれました。一方、ワックス層ごと取り除くと効果がなくなりました。
幼虫を対象に散布してください。成虫には効果が劣ります。沖縄県の室内試験(有効成分30%のフロアブル4,000倍)では、幼虫は処理5日後に死亡率100%でしたが、成虫は14日後でも66.7%にとどまり、生き残った成虫から次世代の幼虫が発生しました。発生している齢構成を確認してから使ってください。
いいえ、浸透移行性はありません。接触で効く薬剤で、散布した量の95%以上は葉の表面にとどまり、葉の中に入るのは1%未満です。葉の表裏、果実にムラなく散布してください。
ハチ類への影響はほとんどありませんが、一部の天敵には影響があります。セイヨウミツバチ・マルハナバチ・マメコバチは、虫体散布・経口投与のいずれでも72時間後の死亡率0%で、ミツバチの訪花活動にも影響はないとされています。ミヤコカブリダニ、ナミテントウ、ハダニアザミウマ、アブラバチなども影響は小さい区分です。
一方、チリカブリダニは成虫で死亡率31〜80%、卵で81〜99%、クサカゲロウ類幼虫で31〜80%と影響があるため、これらを利用している場合は注意してください。
かんきつ・びわでは、多くの混用事例があります。技術資料には、殺虫剤・殺ダニ剤32品目、殺菌剤31品目との混用事例、3種混用の事例が掲載されています。ただし、気象・栽培条件などで結果が異なる場合があり、安全性を保証するものではないため、参考事例として確認してから使ってください。
他剤と混ぜるときは、1剤ずつ水に溶いてから次を加えます。乳剤と混ぜる場合は乳剤が先です。少ない水に2剤を同時に入れて練らないでください。
ご使用に際して、製品ラベルに記載された希釈倍率・使用時期・使用回数・収穫前日数を必ず遵守してください。製品ラベルの記載と本ページの記載が異なる場合や薬害や安全使用上の注意などの記載がある場合は、製品ラベルの記載に従ってください。都道府県によってご使用を控えるよう指定されている農薬があるため、お住まいの地域の指針もあわせてご確認ください。河川・水路等への流入および周辺への飛散に注意し、使用後の容器は適切に処理してください。誤って眼または皮膚に付着した場合は、直ちに水で洗い流してください。体調に異常が生じた場合は、医師の診断を受けてください。直射日光および高温を避け、小児の手の届かない場所で保管してください。
