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最終確認:2026年10月3日
農薬登録情報:独立行政法人農林水産消費安全技術センター
技術情報:コルテバ・アグリサイエンス日本株式会社技術資料ほか
クリンチャーEWは、シハロホップブチルを有効成分とする、水稲のノビエなどのイネ科雑草を6葉期まで枯らすHRACコード1のアリールオキシフェノキシプロピオネート系除草剤です。茎葉から速やかに吸収されるため雨に強く、湛水・落水を問わず土壌や水の条件に左右されずに使える、イネに安全なヒエ専用の茎葉処理剤です。
イネ科雑草が体をつくるのに必要な脂肪酸の合成を止める成分です。葉や茎から吸収されて生長点に移り、ノビエは生育が止まったあと新しい葉から黄色く枯れていきます。イネはこの成分の影響を受けにくいため、イネを残してノビエだけを枯らします。
大きくなったノビエも6葉期まで枯らす
移植水稲では、ノビエが6葉期まで大きくなってからでも枯らすことができます。一発処理剤で取り残したノビエや、後から生えてきたノビエの仕上げの防除に使えます。
効き目が早く、雨に強い
葉や茎からすばやく吸収され、処理後1〜2日でノビエの生育が止まります。薬液が乾いた後であれば、雨が降っても効果はほとんど落ちません。
土壌や水の条件に左右されない茎葉処理剤
ノビエの葉や茎に直接かけて効かせるため、土の種類や水の状態に効果が左右されません。田に水がある状態でも水を落とした状態でも散布でき、移植・直播・育苗箱に加え、ドローンでの散布にも対応しています。
| 作物 | 適用病害虫雑草 | 希釈倍数・使用量 | 使用時期 | 使用回数 | 使用方法 |
|---|---|---|---|---|---|
| 移植水稲 | アゼガヤ | 100mL/10a散布液量 25~100L/10a | 移植後20日~ノビエ6葉期 但し、収穫30日前まで | 2回以内 | 湛水散布又は落水散布 |
| 移植水稲 | キシュウスズメノヒエ | 100mL/10a散布液量 25~100L/10a | 移植後20日~ノビエ6葉期 但し、収穫30日前まで | 2回以内 | 湛水散布又は落水散布 |
| 移植水稲 | ノビエ | 100mL/10a散布液量 25~100L/10a | 移植後20日~ノビエ6葉期 但し、収穫30日前まで | 2回以内 | 湛水散布又は落水散布 |
| 移植水稲 | ノビエ | 100mL/10a散布液量 0.8~1.6L/10a | 移植後20日~ノビエ4.5葉期 但し、収穫30日前まで | 2回以内 | 無人航空機による散布 |
| 稲(箱育苗) | ノビエ | 1000倍散布液量 育苗箱(30×60cm)当り18mL | は種後10日~ノビエ5葉期 | 1回 | 雑草茎葉散布又は全面散布 |
| 直播水稲 | 一年生イネ科雑草 | 100mL/10a散布液量 25~100L/10a | は種後10日~ノビエ5葉期 但し、収穫30日前まで | 2回以内 | 雑草茎葉散布又は全面散布 |
| 直播水稲 | 一年生イネ科雑草 | 100mL/10a散布液量 0.8~1.6L/10a | は種後10日~ノビエ4.5葉期 但し、収穫30日前まで | 2回以内 | 無人航空機による散布 |
HRACコード:1(アセチルCoAカルボキシラーゼ〔ACCase〕阻害、アリールオキシフェノキシプロピオネート系)
技術資料によれば、シハロホップブチルは茎葉部から速やかに吸収され、作用点(主として生長点)に移行し、脂肪酸の生合成を阻害して生育を停止させ、枯死させます。Yang et al.(2022)は、シハロホップブチルは葉・葉鞘から吸収されて師部を移行し、活性本体のシハロホップ酸に速やかに分解されてACCaseを阻害するとしています。
岩上(2015)は、ACCase阻害剤の標的は葉緑体にある真核生物型ACCaseで、イネ科植物はこの型を、それ以外の植物は原核生物型を持つため、ACCase阻害剤はイネ科植物を選択的に枯らすとしています。このため、広葉雑草やカヤツリグサ科雑草には効果がありません。
技術資料は、イネに通常量の8倍を処理しても薬害が見られず、この選択性はシハロホップブチルの植物体への吸収速度と代謝速度の違いによるものと考えられるとしています。伊藤ら(1998、京都大学)は、イネ科29種を用いた温室試験で、タイヌビエ・イヌビエ3変種・アゼガヤは100g/haで100%枯死した一方、イネ・コムギ・オオムギなどは300g/haでも枯死しなかったとし、茎頂での分げつ・根茎の形成力が感受性に関係していると示唆しています。
技術資料によれば、処理後ノビエは1〜2日で生育を停止し、新葉から黄化・褐変して枯れていきます。完全に枯れるまでの期間は葉齢が進むほど長くなり、気温が高いと短くなる傾向があります。メーカーは、散布後7〜10日で効果が完成するとしています。
シハロホップブチル(開発コードDEH-112)はダウ・エランコ社(現コルテバ・アグリサイエンス)が発見した茎葉処理のイネ科除草剤です。開発元(近藤ら 1997)によれば、粒剤(3葉期ごろの湛水処理)の開発に加え、5葉期ごろのノビエを「救済」する茎葉処理用としてEW製剤が開発されました。1991年度から日本植物調節剤研究協会を通じた実用化試験が行われ、1996年4月25日に登録されました。
その後、ノビエ6葉期まで、直播水稲の一年生イネ科雑草、稲(箱育苗)、無人航空機による散布へと適用が拡大しています。
シハロホップブチル30.0%。製剤は類白色粘稠乳濁液体のEW(エマルジョン・オイル・イン・ウォーター)で、有効年限は5年です。技術資料は、EWは原体を特殊な技法で水中に分散させた製剤で、溶媒が極めて少なく、使用者と環境への安全性に配慮した製剤としています。開発元(近藤ら 1997)は、予備的な魚毒性試験でEW製剤の方がマイクロエマルション製剤より安全であったことからEW製剤を選んだとしています。登録使用量(100mL/10a)は有効成分30g/10aに当たります。
有効成分30g/10a(登録使用量)の茎葉処理で、ノビエ2・3・5葉期の除草効果はいずれも100%でした。18g/10aでは5葉期で80%でした。
除草効果は、5葉期で240g ai/ha 99%・300g 100%、6葉期で240〜360g 100%、7〜8葉期で240g 94%・300g 97%、9〜10葉期で240〜480g 50〜70%でした。著者は30%EWの240g ai/haで5〜6葉期のイヌビエを防除できるとしています。散布液量は、少なすぎる(250L/ha)と低薬量で効果が下がったため、500〜1,000L/haを推奨しています。すべての試験でイネ(コシヒカリ)の薬害は0%でした。
ノビエ4葉期に有効成分18g/10a(登録使用量より少ない薬量)を散布し、風乾後に60mm/時の降雨を5分間与えた試験で、降雨までの時間が0〜4時間のいずれでも枯殺率97〜98%(無降雨100%)でした。技術資料は、処理後に薬液が乾いた後は降雨による効果の低減はほとんどないとしています。
技術資料は、茎葉処理剤であるため、土壌処理剤と違って効果が土壌条件・水条件の影響を受けないとしています。メーカーのちらしも、降雨・減水の影響を受けにくい安定した効果としています。
2.5葉期のイネの移植5日後に茎葉処理した試験で、有効成分30〜240g/10a(登録使用量の1〜8倍)のいずれでも薬害は0%でした。メーカーは、育苗箱でも使えるほどイネへの安全性が高いとしています。
有効成分30g/10aを処理した田面水中のシハロホップブチルは、処理1日後には検出限界以下となりました。技術資料は、水溶解度・蒸気圧とも低く土壌粒子に吸着されやすいため、処理した水田からの流出は極めて少ないとしています。
原体の急性経口LD50(ラット・マウス)は5,000mg/kg超、急性経皮LD50(ラット)は2,000mg/kg超でした。30%EWのコイTLm(48時間)は6.5ppmで、技術資料は養魚田での使用を避けるよう注意しています。
100mL/10aを25〜100L/10aの水に希釈して散布します。移植水稲は移植後20日〜ノビエ6葉期(湛水散布または落水散布)、直播水稲は、は種後10日〜ノビエ5葉期(雑草茎葉散布または全面散布)で、いずれも収穫30日前までです。稲(箱育苗)は1000倍を育苗箱(30×60cm)当たり18mL、は種後10日〜ノビエ5葉期に1回散布します。
移植水稲のノビエと直播水稲の一年生イネ科雑草に、100mL/10aを0.8〜1.6L/10aの水で、ノビエ4.5葉期までに散布できます。周辺に水稲以外の作物が栽培されている場合は行わないでください。
本剤は2回以内(稲〔箱育苗〕は1回)で、シハロホップブチルを含む農薬の総使用回数は3回以内です。必ず最新の適用表で確認してください。
展着剤を加用してください。ノビエの茎葉全体によく付着するよう散布します。技術資料は、雑草に露のない時間帯に散布すること、乾田直播では強い乾燥条件下での散布を避けること、散布液は使用当日に調製し容器をよく振ってから使うことを案内しています。
広葉雑草・カヤツリグサ科雑草には効果がないため、これらが混在する田では有効な除草剤と組み合わせてください。技術資料は、移植栽培では一発処理剤や初期剤の後のノビエ対策として、乾田直播栽培では入水前の一年生イネ科雑草の防除として使う体系を示しています。
とうもろこし・食用びえ・ソルガムなどのイネ科作物の生育を阻害するおそれがあるため、散布した田の水をこれらの作物に灌水しないでください。
散布器具・容器の洗浄水や残った薬液は河川等に流さないでください。技術資料は、養魚田での使用を避けるよう注意しています。
普通物に区分されています。
HRACコード1(ACCase阻害、アリールオキシフェノキシプロピオネート系)の除草剤です。国内では、直播栽培で長く使われてきた田を中心に、シハロホップブチル抵抗性のノビエが岡山県・愛知県・福島県で報告されています。
福島県は、シハロホップブチルの連用を避け、異なる複数の除草剤を組み合わせた体系的な防除を行うようすすめています。愛知県(柏木 2023)は、抵抗性の発達には複数年の連用が大きな要因になりうるとして、有効な剤を隔年で使うことや、大豆作での中耕などの耕種的防除を組み合わせる対策が必要としています。
愛知県の試験では、抵抗性ノビエの一部がフルアジホップP・キザロホップエチル(同じアリールオキシフェノキシプロピオネート系)にも枯れ残りを示しました。岩上(2015)は、ヒエ属は倍数性が高いため、ACCase阻害剤への抵抗性は代謝などによる非作用点抵抗性が多くなる可能性が高いとしており、非作用点抵抗性は他系統の除草剤にも抵抗性が及ぶことがあります。
同じHRAC 1の剤を続けて使わず、地域で効果が確認されている作用機構の異なる剤と組み合わせ、枯れ残りが出た場合は地域の指導機関に相談してください。
技術資料(植調試験のまとめ)では、ノビエに「効果極大」、コナギ・一年生広葉雑草・ホタルイ・ウリカワ・ミズガヤツリには「効果なし」とされています。伊藤ら(1998)の温室試験では、アゼガヤも100g/haで完全に枯死しました。
国内のヒメタイヌビエ(岩上 2015)と中国のイヌビエ(Yang et al. 2022)では作用点の変異が見つからず、除草剤を体内で分解する代謝の亢進などによる非作用点抵抗性とされています。中国のアゼガヤ(Zhang et al. 2022)では、作用点(ACCase)の変異と代謝酵素の両方が関わっていました。
移植水稲はノビエ6葉期まで、直播水稲と育苗箱は5葉期まで、ドローン散布は4.5葉期までが使用時期です。開発元の試験では、登録の使用量に当たる薬量で5〜6葉期のイヌビエを安定して防除した一方、7〜8葉期以降は効果が下がり、9〜10葉期では50〜70%にとどまりました。適期を逃さないよう、ノビエの葉齢を確認してから散布してください。
いいえ、効きません。ノビエなどのイネ科雑草専用の除草剤で、コナギなどの広葉雑草や、ホタルイ・ミズガヤツリなどのカヤツリグサ科雑草には効果がありません。これらが混在する田では、有効な除草剤と組み合わせて使ってください。
本剤が効きにくい抵抗性のノビエが国内で見つかっています。岡山県(2011・2012年)、愛知県、福島県(2024年)の、いずれも直播栽培で同じ系統の除草剤を長く使ってきた田で報告されています。愛知県の調査では、県内26地点のうち18地点のノビエで本剤と同じ成分の処理後に枯れ残りがあり、4ほ場では枯死率0%でした。
枯れ残りが続く場合は、作用の異なる除草剤に切り替え、地域の指導機関に相談してください。
はい、展着剤を加えて使ってください。メーカーは、6葉までのノビエに展着剤を加えて使用するようすすめています。ノビエの茎葉全体によく付着するよう、ていねいに散布してください。
落水散布では、薬液が乾いたら入水できます。湛水散布では、しばらく湛水状態を保ってください。技術資料は、本剤は速やかに吸収されるため、散布液が乾いたらすぐに入水しても効果の低下は小さいとしています。湛水条件で散布する場合は、水の出入りを止めて湛水のまま田面に均一に散布し、少なくとも3〜4日間は通常の湛水状態(水深3〜5cm程度)を保ち、落水・かけ流しはしないよう求めています。
はい、イネ科の作物に影響が出るおそれがあります。とうもろこし・食用びえ・ソルガムなどのイネ科作物の生育を妨げるおそれがあるため、散布した田の水をこれらの作物にかけないでください。周辺に水稲以外の作物が栽培されている場合は、ドローンによる散布は行わないでください。
他剤と混ぜるときは、先にこの乳剤を薄めてから水和剤・フロアブル剤を加えます。少量の水に両方を同時に入れて練らないでください。
ご使用に際して、製品ラベルに記載された希釈倍率・使用時期・使用回数・収穫前日数を必ず遵守してください。製品ラベルの記載と本ページの記載が異なる場合や薬害や安全使用上の注意などの記載がある場合は、製品ラベルの記載に従ってください。都道府県によってご使用を控えるよう指定されている農薬があるため、お住まいの地域の指針もあわせてご確認ください。河川・水路等への流入および周辺への飛散に注意し、使用後の容器は適切に処理してください。誤って眼または皮膚に付着した場合は、直ちに水で洗い流してください。体調に異常が生じた場合は、医師の診断を受けてください。直射日光および高温を避け、小児の手の届かない場所で保管してください。
