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最終確認:2026年10月3日
農薬登録情報:独立行政法人農林水産消費安全技術センター
技術情報:バイエルクロップサイエンス株式会社技術資料ほか
キラップ粒剤は、エチプロールを有効成分とする、稲の斑点米カメムシ類とウンカ類に効くIRACコード2Bのフェニルピラゾール系殺虫剤です。田んぼに湛水散布する粒剤で、成分が稲に取り込まれて吸汁した害虫に効き、アカヒゲホソミドリカスミカメなどのカスミカメ類に特に高い効果を示します。
虫の神経の興奮を抑えるブレーキの働きを止めてしまい、神経が正常に働かない状態にします。その結果、虫は死に至ります。
稲の要注意カメムシ・ウンカ類への高い効果
近年問題となっている斑点米カメムシ類に高い効果を示し、特にアカヒゲホソミドリカスミカメ・アカスジカスミカメなどのカスミカメ類に卓効を示します。トゲシラホシカメムシ・ホソハリカメムシや、トビイロウンカなどのウンカ類も主な対象です。
湛水散布で作業が軽く、飛散が少ない
湛水状態の田面にまくだけの粒剤なので、液剤・粉剤の散布に比べて防除作業の負担を軽くできます。田面水に速やかに崩れて広がる特殊な製剤で、飛散(ドリフト)による周辺作物への影響も少ない薬剤です。
稲に吸われて、汁を吸う害虫に効く
田面水に広がった成分が稲に取り込まれ、茎葉や穂を吸汁したカメムシ類に効果を発揮します。出穂10日前から出穂期までが散布適期で、使いやすい時期の幅があります。
| 作物 | 適用病害虫雑草 | 希釈倍数・使用量 | 使用時期 | 使用回数 | 使用方法 |
|---|---|---|---|---|---|
| 稲 | ウンカ類 | 3kg/10a | 収穫14日前まで | 2回以内 | 湛水散布 |
| 稲 | カメムシ類 | 3kg/10a | 収穫14日前まで | 2回以内 | 湛水散布 |
IRACコード:2B(フェニルピラゾール系、GABA作動性塩素イオンチャネルブロッカー)
IRAC分類の第2グループは、GABA作動性塩素イオンチャネルブロッカー(神経作用)で、この標的タンパク質への作用が殺虫作用に関与することについて強い証拠があるグループです。サブグループ2Bはフェニルピラゾール(フィプロール)類で、エチプロールが例示されています。食品安全委員会の農薬評価書(案)でも、エチプロールは昆虫のGABA作動性の神経伝達部位に作用するフェニルピラゾール系殺虫剤と説明されています。
技術資料によれば、正常な状態では、抑制性神経伝達物質GABAの受容体で塩素イオンチャネルが機能し、神経内をマイナスの状態に保っています。エチプロールを処理すると塩素イオンチャネルが不活性化して電位差がなくなり、神経伝達が阻害されて虫は死に至ります。カメムシ類に対する忌避効果は、技術資料作成時点(2023年)までの知見では確認されていません。
エチプロールは、1994年にローヌ・プーランアグロ社(現バイエル クロップサイエンス)が開発したフェニルピラゾール系殺虫剤で、有効成分としての国内初回登録は2005年1月17日です。キラップ粒剤は試験番号BCI-051として、2005年から日本植物防疫協会を通じて全国の公的試験研究機関で委託試験が行われ、水稲のカメムシ類・ウンカ類に高い効果が確認されました。
2007年12月26日に農薬登録され、2008年4月から販売されています。技術資料は、カメムシ防除は従来、液剤散布・粉剤散布が主流で大変な作業だったが、粒剤で処理できるようになったことで散布の労働を軽減でき、ドリフト防止にも有効であるとしています。
蒸気圧9.1×10⁻⁸ Pa、溶解度は水9.2 mg/L、アセトン90.7 g/L。製剤は淡灰色細粒です。
田面水に速やかに拡散させるための、崩壊型のコーティング製剤です。技術資料には、散布前・処理3分後・5分後・9分後に粒剤が崩れて広がっていく様子が顕微鏡写真で示されています。
エチプロール原体を5%ショ糖液に混ぜて吸わせるパラフィルム法で、バイエル クロップサイエンス結城中央研究所の室内累代飼育系統(成虫)に対するLC50値(ppm)を求めた試験があります。
キラップ粒剤(エチプロール2.0%)を10a当たり6kg〜0.19kgの6段階で水稲(日本晴)に処理し(2006年11月13日、出穂2日後、結城中央研究所ガラス温室、1区1ポット3連制)、処理21日後の稲体濃度と、カメムシを放飼したときの死虫率を調べています。登録使用量にあたる3kg/10a区では、茎葉部1.18 ppm・穂0.32 ppmで、アカヒゲホソミドリカスミカメ(放飼3日後)、オオトゲシラホシカメムシ(放飼7日後)とも死虫率100%でした。
0.75kg・0.38kg・0.19kgに減らした区では、オオトゲシラホシカメムシの死虫率が55.2%・20.7%・10.3%に下がりました(明らかな行動異常を示した個体を含む)。
同じ有効成分を1.5%含む粒剤を3kg/10a処理した試験(2004年、出穂10日前、日本晴)では、処理10日後・20日後とも、第3葉以下の葉、止葉+次葉、地上10cmより上部の茎、穂の順に濃度が高く、いずれの部位も10日後の方が20日後より高い値でした(「穂」は穂全体の濃度で、玄米の濃度ではありません)。
また出穂当日に処理した試験(コシヒカリ)では、火山灰土壌・沖積土壌、水深2cm・5cmのいずれの条件でも、稲体濃度は処理7日後・14日後と上昇していました。
技術資料によれば、急性経口毒性(ラット雌)LD50 >2,000 mg/kg、急性経皮毒性(ラット雌雄)LD50 >2,000 mg/kg、皮膚刺激性なし、眼刺激性は極く軽度、皮膚感作性なしです。水生生物では、コイLC50(96時間)>1,000 mg/L、オオミジンコEC50(48時間)126 mg/L、藻類EbC50(0〜72時間)196 mg/Lです。
稲のウンカ類・カメムシ類に、3kg/10aを湛水散布します。使用時期は収穫14日前まで、本剤の使用回数は2回以内です。エチプロールを含む農薬の総使用回数は2回以内で、は種時(直播)または移植時までの処理は1回以内です。メーカーがすすめる散布適期は出穂10日前から出穂期までです。
使用量に合わせて秤量し、使いきってください。水深3〜5cmの湛水状態で均一に散布し、散布後少なくとも4〜5日間は湛水状態を保ってください。散布後7日間は落水およびかけ流しをしないでください。初めて使用する場合は、病害虫防除所等関係機関の指導を受けることが望ましいとされています。
メーカーは、水田内・畦畔の除草を組み合わせた総合防除を提案しています。
蚕に影響があるため、周辺の桑葉にかからないようにしてください。ミツバチにも影響があるため、巣箱およびその周辺にかからないようにし、周辺で養蜂が行われているかを関係機関に確認して、養蜂が行われている場合は農薬使用の情報を提供してください。
SDSでは水生環境有害性(長期)区分2とされています。機器の洗浄水などで地表水・地下水を汚染しないようにしてください。空袋は圃場などに放置せず、適切に処理してください。
眼に対して刺激性があるため、眼に入った場合は直ちに水洗し、眼科医の手当てを受けてください。散布の際は農薬用マスク、手袋、長ズボン・長袖の作業衣などを着用し、作業後は手足・顔などを石けんでよく洗い、うがいをしてください。SDSでは、発がん性区分1・生殖細胞変異原性区分2(根拠成分はエチプロール)などのGHS分類が記載されています。
直射日光を避け、食品と区別して、なるべく低温で乾燥した場所に密封して保管してください。
普通物に区分されています。
IRACコード2(GABA作動性塩素イオンチャネルブロッカー)のうち、サブグループ2B(フェニルピラゾール系)に属する成分です。国外ではトビイロウンカのエチプロール抵抗性が報告されており、論文の著者らは作用機構の異なる殺虫剤のローテーションが効果維持の鍵としています。同じ成分・同じグループの薬剤の連用を避け、IRACコードの異なる薬剤と組み合わせてください。
稲のウンカ類・カメムシ類です(使用量3kg/10a、湛水散布)。
メーカーは、近年問題となっている斑点米カメムシ類に高い防除効果を示し、とくにアカヒゲホソミドリカスミカメのようなカスミカメムシ類に卓効を示すとしています。技術資料の主な適用害虫は、アカヒゲホソミドリカスミカメ、アカスジカスミカメ、トゲシラホシカメムシ、ホソハリカメムシです。メーカーのブランドページではミナミアオカメムシも防除対象として紹介されています。
八塚ら(2022)は、2021年に茨城県つくばみらい市・龍ヶ崎市・利根町の水田で採集したイネカメムシ(羽化後8日以内の成虫)を、薬剤希釈液に約3秒浸漬する室内試験で、稲のカメムシ類に登録のある薬剤の効果を調べています(25℃・16L8D、処理1〜72時間後に判定、Abbott補正)。
著者らは、エチプロール水和剤とジノテフラン液剤がイネカメムシに即効的で高い殺虫効果を示したとしたうえで、圃場での効果や、液剤・粒剤など剤型の違いによる被害抑制効果は今後の検討課題としています。
技術資料の主な適用害虫にはトビイロウンカが含まれています。国外では、トビイロウンカのエチプロール抵抗性が報告されています。
これらはいずれも国外の個体群での結果で、日本の個体群は含まれていません。
メーカーがすすめる散布適期は、出穂10日前から出穂期までです。登録上の使用時期は「収穫14日前まで」で、本剤の使用回数は2回以内です。斑点米カメムシ類の対策では、この散布適期を目安に計画してください。
水深3〜5cmの湛水状態で均一に散布し、散布後少なくとも4〜5日間は湛水状態を保ってください。散布後7日間は落水やかけ流しをしないでください。成分が田面水から稲に取り込まれて効く薬剤のため、水管理が効果を左右します。
エチプロールを含む農薬の総使用回数は2回以内です。ただし、は種時(直播)または移植時までの処理は1回以内に限られます。育苗箱や田植え時に同じ成分の薬剤を使った場合は、その回数も数に入れてください。
登録上の対象は「カメムシ類」で、有効成分エチプロールはイネカメムシにも高い殺虫効果が確認されています。茨城県の3地点で採集したイネカメムシ成虫を、エチプロール水和剤(1,000倍)に浸漬した室内試験では、処理1時間後から72時間後まで、雌雄とも補正死虫率100%でした(八塚ら 2022)。水和剤を用いた室内試験の結果です。
いいえ、カメムシ類に対する忌避効果は確認されていません。本剤は稲を吸汁したカメムシ類を殺虫する薬剤です。メーカーは、水田内・畦畔の除草を組み合わせた総合防除を提案しています。
はい、影響があります。蚕に影響があるため周辺の桑葉にかからないようにしてください。ミツバチにも影響があるため、巣箱およびその周辺にかからないようにし、周辺で養蜂が行われているかを関係機関に確認して、ミツバチの危害防止に努めてください。
直ちに水洗し、眼科医の手当てを受けてください。本剤は眼に対して刺激性があります。散布の際は農薬用マスク、手袋、長ズボン・長袖の作業衣などを着用し、作業後は手足・顔などを石けんでよく洗い、うがいをしてください。
ご使用に際して、製品ラベルに記載された希釈倍率・使用時期・使用回数・収穫前日数を必ず遵守してください。製品ラベルの記載と本ページの記載が異なる場合や薬害や安全使用上の注意などの記載がある場合は、製品ラベルの記載に従ってください。都道府県によってご使用を控えるよう指定されている農薬があるため、お住まいの地域の指針もあわせてご確認ください。河川・水路等への流入および周辺への飛散に注意し、使用後の容器は適切に処理してください。誤って眼または皮膚に付着した場合は、直ちに水で洗い流してください。体調に異常が生じた場合は、医師の診断を受けてください。直射日光および高温を避け、小児の手の届かない場所で保管してください。
