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最終確認:2026年10月3日
農薬登録情報:独立行政法人農林水産消費安全技術センター
技術情報:バイエルクロップサイエンス株式会社技術資料ほか
アリエッティ水和剤は、ホセチルを有効成分とする、病原菌への直接作用と作物の自己防衛機能の強化で効くFRACコードP07のホスホネート系殺菌剤です。植物の中を上にも下にも移行し、散布後に伸びた新梢・新葉も守ります。きゅうり・ぶどう・ほうれんそうなどのべと病、かぼちゃ・ねぎなどの疫病に使えます。
病原菌の胞子の発芽や侵入を直接抑えるとともに、作物が自分で抗菌物質をつくる力を高めて、入り込んだ菌が広がるのを防ぎます。葉や根から吸われた成分は、植物の中を上にも下にも移動します。
直接の殺菌作用と、作物の自己防衛力を高める作用の2つで効く
薬剤が病原菌の胞子の発芽や菌糸の侵入、胞子づくりを直接抑えます。さらに作物が本来持っている自己防衛の働き(抗菌物質づくりなど)を強め、入り込んだ菌が広がるのを内側から食い止めます。
上にも下にも移行、散布後に伸びた新梢・新葉も守る
葉や根から吸収された成分が、植物の中を上方へも下方へも移動します。メーカーは、散布後に伸びた新梢での発病も抑えるとしており、作物の生育が盛んな時期に使うと特に高い効果を発揮します。
べと病・疫病の専門剤、野菜から果樹まで幅広く
きゅうり・メロン・かぼちゃ・ねぎ・わけぎ・ほうれんそう・みつば・わさび・ぶどう・ホップのべと病、かぼちゃ・ねぎ・わけぎ・パッションフルーツ・たばこの疫病、かんきつの褐色腐敗病・苗疫病に使えます。ほかにも、なしの黒斑病・輪紋病、りんごのすす点病・斑点落葉病、にんじんの黒葉枯病などに登録があります。
| 作物 | 適用病害虫雑草 | 希釈倍数・使用量 | 使用時期 | 使用回数 | 使用方法 |
|---|---|---|---|---|---|
| エンサイ | 白さび病 | 1000倍散布液量 100~300L/10a | 収穫7日前まで | 2回以内 | 散布 |
| かぼちゃ | べと病 | 400~800倍散布液量 100~300L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
| かぼちゃ | 疫病 | 400~800倍散布液量 100~300L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
| かんきつ | 褐色腐敗病 | 400~800倍散布液量 200~700L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
| かんきつ | 苗疫病 | 400~800倍散布液量 200~700L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
| キウイフルーツ | 果実軟腐病 | 600倍散布液量 200~700L/10a | 幼果期まで 但し 収穫120日前まで | 2回以内 | 散布 |
| きゅうり | べと病 | 400~800倍散布液量 100~300L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
| サラダ菜 | 褐斑病 | 1500倍散布液量 100~300L/10a | 収穫3日前まで | 2回以内 | 散布 |
| さるなし | 果実軟腐症 | 600倍散布液量 200~700L/10a | 収穫60日前まで | 1回 | 散布 |
| たばこ | 疫病 | 400~800倍散布液量 200mL/株 | 大土寄時 | 2回以内 | 株元灌注 |
| たばこ | 舞病 | 400~800倍散布液量 100mL/株 | 移植時 | 2回以内 | 株元灌注 |
| なし | 疫病 | 800~1000倍散布液量 200~700L/10a | 収穫14日前まで | 3回以内 | 散布 |
| なし | 黒斑病 | 800倍散布液量 200~700L/10a | 収穫14日前まで | 3回以内 | 散布 |
| なし | 輪紋病 | 800倍散布液量 200~700L/10a | 収穫14日前まで | 3回以内 | 散布 |
| なばな | 白さび病 | 2000倍散布液量 100~300L/10a | 収穫前日まで | 2回以内 | 散布 |
| にんじん | 黒葉枯病 | 800倍散布液量 100~300L/10a | 収穫7日前まで | 3回以内 | 散布 |
| ねぎ | べと病 | 800倍散布液量 100~300L/10a | 収穫3日前まで | 3回以内 | 散布 |
| ねぎ | 疫病 | 800倍散布液量 100~300L/10a | 収穫3日前まで | 3回以内 | 散布 |
| パイナップル | 根腐萎凋病 | 400~800倍散布液量 100mL/株 | 開花期まで | 2回以内 | 土壌灌注 |
| パイナップル | 心腐病 | 400~800倍散布液量 100mL/株 | 開花期まで | 2回以内 | 土壌灌注 |
| パイナップル | 心腐病 | 200倍散布液量 - | 植付時 | 1回 | 苗浸漬 |
| パッションフルーツ | 疫病 | 800倍散布液量 200~700L/10a | 収穫7日前まで | 3回以内 | 散布 |
| ぶどう | べと病 | 800倍散布液量 200~700L/10a | 収穫30日前まで | 3回以内 | 散布 |
| ほうれんそう | べと病 | 1500倍散布液量 100~300L/10a | 収穫前日まで | 2回以内 | 散布 |
| ほうれんそう | 白斑病 | 1500倍散布液量 100~300L/10a | 収穫前日まで | 2回以内 | 散布 |
| ホップ | べと病 | 800倍散布液量 200~700L/10a | 収穫14日前まで | 3回以内 | 散布 |
| みつば | べと病 | 1000倍散布液量 100~300L/10a | 収穫14日前まで 但し伏せ込み栽培は伏せ込み前まで | 2回以内 | 散布 |
| メロン | べと病 | 800倍散布液量 100~300L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
| りんご | すす点病 | 800~1000倍散布液量 200~700L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
| りんご | すす斑病 | 800~1000倍散布液量 200~700L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
| りんご | 褐斑病 | 1000倍散布液量 200~700L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
| りんご | 斑点落葉病 | 800~1000倍散布液量 200~700L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
| わけぎ | べと病 | 800倍散布液量 100~300L/10a | 収穫3日前まで | 3回以内 | 散布 |
| わけぎ | 疫病 | 800倍散布液量 100~300L/10a | 収穫3日前まで | 3回以内 | 散布 |
| わさび(根茎) | べと病 | 600倍散布液量 100~300L/10a | 畑育苗期 | 3回以内 | 散布 |
| 畑わさび(根茎) | べと病 | 600倍散布液量 100~300L/10a | 収穫21日前まで | 3回以内 | 散布 |
FRACコード:P07(ホスホネート系、宿主植物の防御誘導)
バイエル クロップサイエンスの技術資料(2011年)は、本剤が直接的な殺菌作用と間接的な抵抗性誘導作用により効果を発揮するとしています。直接作用では、薬剤の処理層が病原菌の胞子発芽、菌糸の侵入、胞子形成を抑えます。間接作用では、侵入した菌糸に対して植物の自己防衛機能(抗菌物質の生成など)を強化し、菌糸の拡大を阻止します。
ホセチルは植物体内や環境中で速やかに亜リン酸(ホスファイト)に変わり、これが主な活性物質と考えられています(Wang ら 2026、総説)。Fenn・Coffey(1984、1985、1989)は、リン酸の少ない条件ではホセチルアルミニウムと亜リン酸が疫病菌の生育を直接抑えることを示しました。トマト・タバコの組織中のホスホン酸が病害を防ぐのに十分な濃度に達していたことから、直接作用を支持しています。
Smillie ら(1989)は、亜リン酸の直接作用に加え、菌の侵入を完全に止めるには植物の防御が重要としています。Wang ら(2026)は、高濃度では卵菌に直接作用し、通常のほ場での使用量では主に宿主の防御反応(ファイトアレキシンの蓄積、PRタンパク質の誘導、細胞壁の強化)を通じて効果が現れると整理しています。
亜リン酸は木部と篩部の両方の経路に入り、葉面散布だけでも根の周りに保護的な濃度をつくれるとされています。ただし、下向きの移行の効率は作物や生育段階で異なり、一年生作物や生育後期では根への蓄積が大きく下がる場合があります(Wang ら 2026)。
ホスホネート系は、2022年にFRACコード33(作用機作不明)からP07(宿主植物の防御誘導)に再分類されました(Theron ら 2025)。FRACは、少数の耐性事例が報告されているものの低リスクとしています。
ホセチルアルミニウムは、フランスのローヌ・プーラン社が開発した浸透性殺菌剤「Aliette」の有効成分で、1970年代後半に導入されました。日本では本剤が1983年7月21日に登録されています。
ホセチル80.0%の水和剤(類白色水和性粉末、45μm以下)で、有効年限は3年です。有効成分は水によく溶けます(111.3g/L、20℃)。
散布後に展開した葉での効果(Taibi ら 2023、イタリア、ALIETTE〔ホセチルアルミニウム80%〕2.5kg/ha):ぶどうに1回散布し、1〜19日後に葉にべと病菌を接種した試験(2020〜2022年)です。発病程度は無処理より平均39.0%、葉当たりの胞子のう数は85.2%減りました。
散布後に展開した葉(薬剤が直接かかっていない葉)でも、減少効果は変わりませんでした。
疫病菌(Phytophthora cinnamomi)汚染土壌に植えた苗で、ホセチルアルミニウムを葉面散布した区の健全根率は81.8%、土壌灌注区は84.2%で、無処理は0.0%でした。
タバコに1回灌注した亜リン酸による防護効果は、開花期まで約5週間一定でした。
本剤は普通物です。技術資料では、製剤の急性経口LD50はラット雄9,450mg/kg・雌7,250mg/kg、経皮は5,000mg/kg超です。コイLC50は13.8mg/L、オオミジンコEC50は43.3mg/L、藻類ErC50は34.5mg/L(製剤)です。蚕は800倍で10日以上あければ影響がありませんでした。
ミツバチは高濃度で投与しても48時間後の死亡率が非常に低く、毒性は相対的にないとされています。成分のホセチルは、変異原性・発がん性・生殖毒性が認められていません(メーカーSDS)。
ホセチルは植物体内で速やかに亜リン酸に変わるため、親化合物が検出されなくても、亜リン酸由来の残留がないことを意味しないとされています(Wang ら 2026)。亜リン酸は植物体内に長く残る場合があります(Smillie ら 1989、Theron ら 2025)。
果樹・ホップは200〜700L/10a、野菜は100〜300L/10aを散布します。希釈倍数は400〜2000倍で、作物・病害により異なります。パイナップルは植付時の苗浸漬(200倍)と、開花期までの土壌灌注(400〜800倍、1株100mL)ができます。たばこは移植時(1株100mL)・大土寄時(1株200mL)に株元灌注します。
多くの作物で収穫前日〜収穫14日前まで、2〜3回以内です。ぶどうは収穫30日前まで、キウイフルーツは幼果期まで(収穫120日前まで)です。みつばは収穫14日前まで(伏せ込み栽培は伏せ込み前まで)、わさび(根茎)は畑育苗期に使います。必ず最新の適用表で確認してください。
使用量に合わせて薬液を調製し、使い切ってください。散布液を調製したら、できるだけ速やかに散布してください。
本剤を使用したわさびの苗を畑地からわさび田に移植する場合は、苗に付着した土を十分に洗い落としてください。
誤飲・誤食に注意してください。粉末は眼に刺激性があるので、散布液調製時には保護眼鏡を着用し、眼に入った場合は直ちに水洗して眼科医の手当を受けてください。散布の際は農薬用マスク、手袋、長ズボン・長袖の作業衣などを着用し、作業後は手足・顔などを石けんでよく洗い、うがいをし、衣服を交換してください。かぶれやすい体質の人は取り扱いに十分注意してください。
浸漬後の薬液は河川等に流さず、適切に処理してください。
高温や吸湿しやすい条件では物理的性状が劣化するおそれがあるので、直射日光を避け、なるべく低温で乾燥した場所に密封して保管してください。
普通物に区分されています。
FRACコードP07(ホスホネート系)の殺菌剤です。FRACは低リスクとしていますが、米国のホップべと病菌でホスホネート系への高度の非感受性が報告されており、海外では疫病菌の感受性低下の報告もあります。Theron ら(2025)は、ホスホネートを他の系統の殺菌剤と輪用または混用する抵抗性管理を推奨しています。
同じホスホネート系の剤(亜リン酸を含む資材を含む)を続けて使わず、作用機作の異なる剤と組み合わせてください。
収穫直前の果実に発生する疫病菌による病害で、感染力が極めて高く、いったん発病すると急激にまん延します。殺菌剤にはホセチル水和剤などがあり、発病を確認した場合は直ちに散布するとしています。
防除失敗の報告があった商業ホップ園では、Aliette 80WDGの1倍量で無処理と差がない年がありました。2倍量でも、作用機作の異なる殺菌剤の効果には及びませんでした。オレゴン州6農場の54分離株の96%が、亜リン酸剤の最大登録濃度を超えるEC50を示し、ホセチルアルミニウムとの交差抵抗性も確認されています。国内のホップでの感受性の調査は確認できていません。
Phytophthora capsici、P. cinnamomiで感受性の低下が報告されています。カリフォルニアのかんきつでは、P. nicotianaeの86.8%の分離株が亜リン酸カリウムに対して試験管内で感受性の低下を示したと報告されています。一方、Wang ら(2026)は、長期使用でも疫病菌でホセチルアルミニウムへの安定した抵抗性の証拠はないとしています。
病気の発生前から初発時が散布の適期です。作物の生育が盛んな時期の散布は特に効果的です。メーカーの資料でも、予防効果に優れた剤とされています。
はい、混用の制約が多い剤です。石灰硫黄合剤、ボルドー液との混用は避けてください。無機銅を含む剤との混用や近接散布、葉面散布肥料との混用も、薬害を生じるおそれがあるので避けてください。フロアブル剤と混用する場合は、必ずフロアブル剤を先に所定濃度に薄めてから本剤を加えてください。
なし・かんきつ・ぶどう・ほうれんそう・わけぎで注意が必要です。なし(幸水・豊水を除く)は6月中旬までの散布で葉に薬害のおそれがあります。かんきつは未硬化葉のコルク化、みかんは高温時の日焼け果の助長に注意してください。ぶどうは幼果期〜果粒肥大期の散布で果粉が落ちるため、新梢伸長期〜落花期と袋掛け以降に使います。ほうれんそう・わけぎは、所定濃度を守り重ねがけを避けてください。
メーカーは耐性菌が出る可能性はほとんどないとしていますが、海外では効きにくくなった例が報告されています。米国オレゴン州のホップべと病では、登録量の2倍を散布しても十分に防げないほど効きにくくなった菌が報告されています。疫病菌でも、海外で感受性の低下が報告されています。同じ剤ばかり続けず、作用の違う剤と組み合わせて使ってください。
果実の成熟期の予防散布が基本です。褐色腐敗病は収穫直前の果実に発生し、いったん発病すると急激に広がります。農研機構の解説では、排水不良園や水田転換園などの常発園では成熟期に予防散布を組み入れ、発病が見られない園地でも降雨前に予防散布するよう勧めています。発病を確認したら直ちに散布してください。
粉末は眼に刺激性があるので、散布液を調製するときは保護眼鏡を着用してください。散布の際は農薬用マスク・手袋・長袖の作業衣などを着用し、散布液を吸い込んだり浴びたりしないようにしてください。かぶれやすい体質の人は取り扱いに十分注意してください。
高温や湿気で品質が落ちやすいので、直射日光を避け、なるべく低温で乾燥した場所に密封して保管してください。メーカーの製品ページでは、有効年限は3年とされています。
他剤と混ぜるときは、1剤ずつ水に溶いてから次を加えます。乳剤と混ぜる場合は乳剤が先です。少ない水に2剤を同時に入れて練らないでください。
ご使用に際して、製品ラベルに記載された希釈倍率・使用時期・使用回数・収穫前日数を必ず遵守してください。製品ラベルの記載と本ページの記載が異なる場合や薬害や安全使用上の注意などの記載がある場合は、製品ラベルの記載に従ってください。都道府県によってご使用を控えるよう指定されている農薬があるため、お住まいの地域の指針もあわせてご確認ください。河川・水路等への流入および周辺への飛散に注意し、使用後の容器は適切に処理してください。誤って眼または皮膚に付着した場合は、直ちに水で洗い流してください。体調に異常が生じた場合は、医師の診断を受けてください。直射日光および高温を避け、小児の手の届かない場所で保管してください。
