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最終確認:2026年10月3日
農薬登録情報:独立行政法人農林水産消費安全技術センター
技術情報:日本曹達株式会社技術資料ほか
ミギワ10フロアブルは、イプフルフェノキンを有効成分とする、灰色かび病・菌核病・炭疽病・つる枯病・うどんこ病など幅広い病害に効くFRACコード52の殺菌剤です。菌の核酸の材料づくりを止める新しい作用機構をもち、葉の裏へ届く浸達性と、散布した葉から上の葉へ移る移行性を持っています。
病原菌が生きるのに欠かせない核酸(RNAなど)の材料がつくられるのを止めます。材料づくりを止められた菌は、植物に入り込んで根づくことができなくなり、感染が抑えられます。病気が出る前に散布して効かせる、予防効果が主体の殺菌剤です。
新しい作用機構をもつ新規系統の殺菌剤
日本曹達が発明した新しい骨格の有効成分で、菌の核酸の材料づくりという、これまでの殺菌剤とは異なるところに作用します。作用機構の分類でも新しく設けられたグループに入っており、既存の系統の殺菌剤とは異なる選択肢としてローテーションに組み込めます。
灰色かび病・菌核病から炭疽病・うどんこ病まで幅広く
灰色かび病、菌核病、炭疽病、つる枯病、うどんこ病、褐紋病に登録があり、1剤で多くの病害をカバーできます。あずき・いんげんまめ、トマト・ミニトマト・なす・きゅうり・ピーマン、花き類・観葉植物で使え、特に灰色かび病と菌核病の両方に効くことが強みです。
葉の裏まで届き、上の葉にも移る
葉の表に散布しても裏に、裏に散布しても表に成分が届き、薬液がかかりにくい面の病気も防ぎます。散布した葉から上の葉へも成分が移り、散布後の葉を守ります。ただし、散布した葉から離れるほど効果は弱まるため、ていねいな散布が基本です。
| 作物 | 適用病害虫雑草 | 希釈倍数・使用量 | 使用時期 | 使用回数 | 使用方法 |
|---|---|---|---|---|---|
| あずき | 灰色かび病 | 1000倍散布液量 100~300L/10a | 収穫7日前まで | 3回以内 | 散布 |
| あずき | 菌核病 | 1000倍散布液量 100~300L/10a | 収穫7日前まで | 3回以内 | 散布 |
| あずき | 炭疽病 | 1000倍散布液量 100~300L/10a | 収穫7日前まで | 3回以内 | 散布 |
| いんげんまめ | 灰色かび病 | 1000倍散布液量 100~300L/10a | 収穫7日前まで | 3回以内 | 散布 |
| いんげんまめ | 菌核病 | 1000倍散布液量 100~300L/10a | 収穫7日前まで | 3回以内 | 散布 |
| いんげんまめ | 炭疽病 | 1000倍散布液量 100~300L/10a | 収穫7日前まで | 3回以内 | 散布 |
| きゅうり | つる枯病 | 1000倍散布液量 100~300L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
| きゅうり | 灰色かび病 | 1000倍散布液量 100~300L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
| きゅうり | 菌核病 | 1000倍散布液量 100~300L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
| きゅうり | 炭疽病 | 1000倍散布液量 100~300L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
| トマト | 灰色かび病 | 1000倍散布液量 100~300L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
| トマト | 菌核病 | 1000倍散布液量 100~300L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
| なす | うどんこ病 | 1000倍散布液量 100~300L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
| なす | 灰色かび病 | 1000倍散布液量 100~300L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
| なす | 褐紋病 | 1000倍散布液量 100~300L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
| なす | 菌核病 | 1000倍散布液量 100~300L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
| ピーマン | うどんこ病 | 1000倍散布液量 100~300L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
| ピーマン | 灰色かび病 | 1000倍散布液量 100~300L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
| ピーマン | 菌核病 | 1000倍散布液量 100~300L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
| ピーマン | 炭疽病 | 1000倍散布液量 100~300L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
| ミニトマト | 灰色かび病 | 1000倍散布液量 100~300L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
| ミニトマト | 菌核病 | 1000倍散布液量 100~300L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
| 花き類・観葉植物(ばら、きくを除く) | 灰色かび病 | 1000倍散布液量 100~300L/10a | 発病前~発病初期 | 3回以内 | 散布 |
作物名に「(〜を除く)」とある場合はかっこ内の作物がその行の適用範囲に含まれません。 例えば「かんきつ(みかんを除く)」の行に記載された希釈倍数・使用時期・使用回数はみかんに適用されません。 かっこ内の作物は独自の条件で別の行に登録されている場合があります。表内に該当する作物名の行があるかご確認ください。 該当する行がない場合は本剤に当該作物の登録はありません。
FRACコード:52(DHODH阻害、ピリミジンのde novo生合成・ジヒドロオロト酸脱水素酵素阻害、フェニルプロパノール系)
FRACでは、ピリミジンのde novo生合成におけるジヒドロオロト酸脱水素酵素(DHODH)の阻害剤に分類され、耐性リスクは「中〜高」で耐性管理が必要とされています。藤井(2023)は、イプフルフェノキンを日本曹達が発明した新規骨格のフェニルプロパノール系殺菌剤とし、核酸合成代謝で新規の作用を示すことからFRACで新設のコード52に分類されたとしています。
RNAの構成成分であるピリミジン塩基の生合成系で、ジヒドロオロト酸をオロト酸に変換するDHODHを阻害し、阻害された病原菌は植物体への侵入と定着に必要な遺伝子が正常に機能しなくなり、一連の感染行動が抑えられるとしています。
Choi et al.(2024)は、AlphaFold2で予測した灰色かび病菌(Botrytis cinerea)のDHODH(クラス2)の立体構造に対するドッキング計算で、イプフルフェノキンが補酵素Q10と同じキノン結合トンネルに結合すると予測されたとしています(計算上の結合親和性:イプフルフェノキン−9.604 kcal/mol、補酵素Q10 −8.518 kcal/mol)。
13種の菌で比較すると、計算上の結合親和性が高い菌ほど感受性が高い傾向がみられたとしています。
Umetsu & Shirai(2026)によれば、同じくDHODHを標的とするキノフメリン(三井化学アグロ、FRACコード52)が2025年に国内で登録されています。
藤井(2023)によれば、イプフルフェノキン(商標キノプロール®)は2014年から開発コードNF-180として日本植物防疫協会を通じた新農薬実用化試験が始まり、2020年7月14日に登録されました。技術資料によれば、ミギワ10フロアブルは2015年度からNF-180フロアブル10の試験番号で委託試験が行われました。
果樹・茶向けのミギワ20フロアブルが先行して販売され、本剤は野菜・豆類向けの製剤です。Umetsu & Shirai(2026)は、日本に続いて韓国、オーストラリア、米国で登録されたとしています。製品名は、病害を「水際(ミギワ)でブロック」するという開発目的に由来します。
分子式C19H16F3NO2、分子量347.3、水溶解度9.20 mg/L(20℃)、LogPow 3.89(25℃)、融点114.4〜115.5℃、蒸気圧<1.0×10⁻⁵ Pa(20℃)。製剤は類白色水和性粘稠懸濁液体(フロアブル)です。
技術資料の試験(2020年、日本曹達小田原研究所、きゅうり灰色かび病)で、葉の片面に散布し翌日に反対の面に接種したところ、実用濃度100 ppmの防除価は葉裏散布・葉表接種、葉表散布・葉裏接種ともに100でした。25 ppmでも98と100でした。
技術資料のハウス試験(2020年、きゅうり灰色かび病)で、第10葉より下に散布し翌日に第10〜15葉に接種したところ、100 ppmの防除価は第10葉(散布葉)100、第11葉68、第12葉47、第13葉27、第14葉14、第15葉4でした。藤井(2023)のりんご(本剤の登録作物ではありません)での試験では、苗の先端を袋で覆って散布し、散布後に展開した3葉の黒星病の防除価はミギワ20フロアブル2,000倍で68.2、4,000倍で41.0でした(対照剤2剤は52.3と9.1)。
技術資料の温室内ポット試験(2019年、きゅうり灰色かび病)で、散布当日・7日後・14日後に接種した区の防除価は、100 ppm・25 ppmともにすべて100でした。
技術資料のポット試験(2020年、きゅうり灰色かび病)で、散布3時間後または翌日に計40 mmの人工降雨を与えたところ、防除価は100 ppmで降雨なし・3時間後降雨・翌日降雨ともに100、25 ppmで100・92・89、対照剤(150 ppm)で94・48・31でした。
SDSでは、製品の急性経口・経皮LD50は2,000 mg/kg超、吸入LC50は1.6 mg/L超(4時間)とされています。製品のGHS分類は、急性毒性(吸入:粉じん・ミスト)区分4、生殖毒性(授乳影響)追加区分(界面活性剤成分による)、水生環境有害性 短期区分3です。有効成分の水生生物への影響は、ニジマスLC50 4.4 mg/L(96時間)、オオミジンコEC50 2.5 mg/L(48時間)とされています。
全作物で1000倍、使用液量100〜300L/10aで散布します。使用時期は、あずき・いんげんまめが収穫7日前まで、野菜が収穫前日まで、花き類・観葉植物が発病前〜発病初期です。本剤、イプフルフェノキンを含む農薬の総使用回数とも3回以内です。
予防効果主体のため、発病前から発病初期に散布してください。
あずき5品種、いんげんまめ4品種、きゅうり19品種、なす7品種、トマト9品種、ミニトマト(千果)、ピーマン7品種、シクラメン・パンジー・ペチュニアの各品種で薬害は認められていません。
使用前によく振り、使用量に合わせて薬液を調製し、使いきってください。
実用濃度1000倍で、クロマルハナバチ、寄生蜂3種、カスミカメ類2種、タイリクヒメハナカメムシ、カブリダニ類5種の計12種で影響なし(IOBC基準で死亡率30%未満)とされています。蚕には影響があるため、養蚕に使う桑葉にかからないようにしてください。
SDSでは水生環境有害性 短期区分3とされています。河川や水路に流出しないよう注意してください。
SDSでは、有機ガス用防毒マスク、不浸透性手袋、ゴーグル、長袖・長ズボンの着用が求められています。
普通物に区分されています。
FRACコード52(DHODH阻害)の単剤です。FRACは耐性リスクを「中〜高」とし、耐性管理が必要としています。メーカーは、耐性菌の発生リスクを抑えるため、登録薬量を守り発病前に使用すること、過度の連用を避け作用機構の異なる薬剤と輪番で使用することを求めています。
既存のDMI剤、QoI剤、SDHI剤、ベンゾイミダゾール系剤、アニリノピリミジン剤、ジカルボキシイミド系剤とは交差耐性を示さないとされており、これらの系統とのローテーションに組み込めます。同じFRACコード52のキノフメリンは同じ系統として扱い、連続して使わないでください。
Choi et al.(2024)は、2023年に韓国の88か所のいちご農場から分離した灰色かび病菌88菌株のEC50が、菌糸生育で0.0025〜2.88 mg/L(平均0.46)で、耐性菌は見つからなかったとしています。
藤井(2023)は、りんご黒星病菌と灰色かび病菌の各種耐性菌で、DMI剤、QoI剤、SDHI剤、ベンゾイミダゾール系剤、アニリノピリミジン剤、ジカルボキシイミド系剤と交差耐性を示さないことを確認したとしています。Choi et al.(2024)の韓国のいちご果実での試験(本剤の登録作物ではありません)では、SDHI・QoI・ベンゾイミダゾール系の標的遺伝子に変異をもつ菌株を含む灰色かび病菌5菌株に対し、イプフルフェノキン100 mg/Lの防除効果は87〜98%で、フルキサピロキサド、ピラクロストロビン、ベノミルは変異をもつ菌株に効果が低かったとしています。
Choi et al.(2024)は、担子菌類・ケカビ類・卵菌類と一部の子のう菌類は感受性が低いとしています(Rhizoctonia solani、Cladosporium tenuissimumはEC50>100 mg/L)。同じ試験の温室で、イプフルフェノキン区では灰色かび病は抑えられた一方、Cladosporium属による花枯れとRhizopus属による腐敗の割合が増え、著者は、感受性の低い菌が入れ替わって増える可能性を指摘しています。
予防効果が主体の殺菌剤です。発病前から発病初期に散布してください。メーカーは、耐性菌の発生リスクを抑えるため、登録薬量を守り、発病前に使用するよう求めています。
本剤、イプフルフェノキンを含む農薬の総使用回数とも、全作物で3回以内です。希釈倍率は全作物で1000倍、使用時期はあずき・いんげんまめが収穫7日前まで、野菜が収穫前日までです。
効果が期待できます。藤井(2023)は、りんご黒星病菌と灰色かび病菌の各種耐性菌を用いて、DMI剤、QoI剤、SDHI剤、ベンゾイミダゾール系剤、アニリノピリミジン剤、ジカルボキシイミド系剤と交差耐性を示さないことを確認したとしています。ただし、FRACは本剤の系統(FRACコード52)の耐性リスクを「中〜高」としています。
同じFRACコード52のキノフメリンも2025年に登録されているため、同じ系統として扱い、作用機構の異なる薬剤と輪番で使ってください。
はい、雨に強い薬剤です。きゅうり灰色かび病のポット試験で、散布3時間後または翌日に計40mmの人工降雨を与えても、実用濃度(100ppm)の防除価は100でした。
きゅうり灰色かび病の温室内ポット試験では、実用濃度で散布14日後に接種しても防除価は100でした。
技術資料の社内試験では、実用濃度1000倍で、クロマルハナバチ、オンシツツヤコバチ、ギフアブラバチ、コレマンアブラバチ、タバコカスミカメ、クロヒョウタンカスミカメ、タイリクヒメハナカメムシ、ミヤコカブリダニ、チリカブリダニ、ククメリスカブリダニ、スワルスキーカブリダニ、リモニカスカブリダニの12種すべてで「影響なし」でした。蚕には影響があるため、養蚕に使う桑葉にかからないようにしてください。
いいえ、いちごには登録がありません。いちごの展開途上葉に薬液がかかると薬害を生じるおそれがあるため、周辺でいちごが栽培されている場合は注意して散布してください。メーカー製品ページは、ばらの展開途上葉についても注意を求めています。
花き類・観葉植物(ばら、きくを除く)の灰色かび病に登録があります。使用時期は発病前〜発病初期です。新しい品種に初めて使う場合は、事前に薬害の有無を確認してください。
他剤と混ぜるときは、1剤ずつ水に溶いてから次を加えます。乳剤と混ぜる場合は乳剤が先です。少ない水に2剤を同時に入れて練らないでください。
ご使用に際して、製品ラベルに記載された希釈倍率・使用時期・使用回数・収穫前日数を必ず遵守してください。製品ラベルの記載と本ページの記載が異なる場合や薬害や安全使用上の注意などの記載がある場合は、製品ラベルの記載に従ってください。都道府県によってご使用を控えるよう指定されている農薬があるため、お住まいの地域の指針もあわせてご確認ください。河川・水路等への流入および周辺への飛散に注意し、使用後の容器は適切に処理してください。誤って眼または皮膚に付着した場合は、直ちに水で洗い流してください。体調に異常が生じた場合は、医師の診断を受けてください。直射日光および高温を避け、小児の手の届かない場所で保管してください。
