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最終確認:2026年10月3日
農薬登録情報:独立行政法人農林水産消費安全技術センター
技術情報:住友化学株式会社技術資料ほか
粘着くん液剤は、食品にも使われる加工デンプンを有効成分とする、ハダニ・アブラムシ・コナジラミに速効的に効く気門封鎖型の殺虫剤です。薬液が虫を包み込んで呼吸をふさぐ物理的な作用で効くため抵抗性がつきにくく、野菜類は収穫前日まで使え、野菜類のうどんこ病にも登録があります。
薬液が害虫の体を包み込み、呼吸のための穴(気門)をふさいで窒息させます。でんぷんの粘着力で虫を捕らえる働きもあります。化学的な作用ではなく物理的に効く殺虫剤です。
デンプンを有効成分とする気門封鎖剤
有効成分は、食品にも使われている加工デンプンです。野菜類では収穫前日まで使うことができ、使用回数の制限もありません(たばこを除く)。
ハダニ・アブラムシ・コナジラミ、微小害虫に速効的
ハダニ類、アブラムシ類、コナジラミ類の成虫など、体の小さな害虫に効きます。散布後10〜20分ほどで薬液が乾くころには、薬液のかかった害虫はすでに死んでいる、きわだった速効性があります。
物理的に効くので、抵抗性がつきにくい
薬液で虫を包み込む物理的な作用で効くため、化学農薬に抵抗性がついた害虫にも効果があります。害虫が本剤に抵抗性をつける可能性もほとんどないとされています。
| 作物 | 適用病害虫雑草 | 希釈倍数・使用量 | 使用時期 | 使用回数 | 使用方法 |
|---|---|---|---|---|---|
| かんきつ | ミカンハダニ | 100倍散布液量 200~700L/10a | 収穫後から萌芽前まで | - | 散布 |
| かんしょ | ハダニ類 | 100倍散布液量 150~300L/10a | 収穫前日まで | - | 散布 |
| たばこ | モモアカアブラムシ | 100倍散布液量 25~180L/10a | 収穫3日前まで | 2回以内 | 散布 |
| もも | ハダニ類 | 100倍散布液量 200~700L/10a | 収穫前日まで | - | 散布 |
| らっかせい | ハダニ類 | 100倍散布液量 150~300L/10a | 収穫前日まで | - | 散布 |
| りんご | アブラムシ類 | 100倍散布液量 200~700L/10a | 収穫前日まで | - | 散布 |
| 花き類・観葉植物 | ハダニ類 | 100倍散布液量 150~300L/10a | 発生初期 | - | 散布 |
| 茶 | カンザワハダニ | 100倍散布液量 400L/10a | 摘採前日まで | - | 散布 |
| 野菜類 | アブラムシ類 | 100倍散布液量 150~300L/10a | 収穫前日まで | - | 散布 |
| 野菜類 | うどんこ病 | 100倍散布液量 150~300L/10a | 収穫前日まで | - | 散布 |
| 野菜類 | コナジラミ類 | 100倍散布液量 150~300L/10a | 収穫前日まで | - | 散布 |
| 野菜類 | ハダニ類 | 100倍散布液量 150~300L/10a | 収穫前日まで | - | 散布 |
IRACコード:分類なし(物理的作用)
メーカーは、殺虫効果は薬液が虫を被覆することによる「虫体の捕捉」と「呼吸阻害」の物理的作用によるものとしています。前身品の技術資料は、薬液が虫体を被覆することによる窒息や、でんぷんの粘着効果によると考えられるとしています。宮田(2009)は、気門封鎖型薬剤の殺虫作用を、薬剤成分が害虫の気門から内部に浸潤し、毛細気管を被覆・封鎖するためと説明しています。
宮田(2009)と関根(2016)は、気門封鎖型薬剤は作用の性質から薬剤抵抗性が発達しにくいと考えられるとしています。宮田(2009)は、有用生物への残効がないと考えられること、使用回数の制限がないことも特徴として挙げています。一方で、虫体に薬液が直接接触しないと殺虫効果を発揮せず、残効がないことも共通の性質です。
現行の粘着くん液剤(第24145号)は、住友化学株式会社が2018年10月18日に登録を受けた製品です。同じ商品名の前身品は株式会社アグロスが開発した「化学殺虫成分を含まないソフト農薬」で、1998年5月に登録されました。以下の試験データの多くは前身品の技術資料(1999年)と2005〜2016年の論文によるもので、現行製品そのものの試験ではありません。
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン5.0%。メーカーは、安全性が高く食品にも使用可能な加工デンプンとしています。製剤は類白色水溶性粘稠液体で、100倍に希釈するとさらっとしており、植物がべたつくことはないとされています(前身品)。
前身品の技術資料は、殺虫スペクトラムは微小サイズの昆虫やハダニ類に限定され、殺卵活性はごく弱いか認められないとしています。カンザワハダニの試験では、100倍で卵以外の各ステージの死亡率が約90〜98%でしたが、200倍では約25〜70%に下がりました。
前身品の技術資料は、散布後10〜20分(露地条件)で散布薬液が乾き、薬液の十分かかった害虫は乾くまでに死亡しているとしています。宮田・増田(2006)の室内試験では、澱粉液剤100倍を散布したナミハダニ・カンザワハダニの雌成虫は、散布24時間後に全頭が死亡しました。
長崎県農林技術開発センターの試験(2008〜2010年度)では、粘着くん液剤100倍のハダニ類雌成虫への効果は、処理量が0.8 µL/cm²を超えると高くなり、1.2 µL/cm²以上ではほぼ100%でした。0.4 µL/cm²では葉面に散布ムラが生じました。同試験で、粘着くん液剤は供試した気門封鎖型殺虫剤5剤の中でナミハダニ・カンザワハダニの雌成虫に最も効果が高かったとされています。
宮田・増田(2006)では、澱粉液剤を散布したハダニ卵の孵化率は蒸留水と同程度でした。長崎県の試験でも、粘着くん液剤の殺卵効果は処理量に関係なくほぼありませんでした。
長崎県農林技術開発センター(2018年度)のイチゴ・ナミハダニの試験では、粘着くん液剤とダニサラバフロアブルの混用で処理7日後・15日後に相乗効果(防除価100・96)が認められましたが、マイトコーネフロアブルとの混用では相乗効果は認められず、同センターは相乗効果のメカニズムは不明としています。
SDSでは、急性経口LD50(ラット)は5,000 mg/kg超、眼・皮膚刺激性なし、皮膚感作性なしとされています。製品のGHS分類は、水生環境有害性(短期区分3・長期区分3)のほかは区分に該当しないとされています。
すべて100倍で散布します。使用液量は、野菜類・かんしょ・らっかせい・花き類150〜300L/10a、かんきつ・りんご・もも200〜700L/10a、茶400L/10a、たばこ25〜180L/10aです。使用時期は多くの作物で収穫前日まで(茶は摘採前日まで)、かんきつは収穫後から萌芽前まで、たばこは収穫3日前まで、花き類・観葉植物は発生初期です。使用回数の制限はたばこ(2回以内)のみです。
散布液が直接害虫にかからないと効果がないため、葉の表裏にむらなくていねいに散布してください。卵には効果がなく残効も短いため、5〜7日間隔の連続2回散布や他剤との輪番で使用してください。展着剤の加用は必要ないとされています(前身品)。前身品の技術資料は、イチゴや茶など薬液が十分かからない作物では少発生時の散布を心がけるようすすめています。常温煙霧器での使用は効果が期待できないとされています(前身品)。
かんきつ・みずなすは果実のある時期の使用を避けてください。ボルドー液を散布した後、軟弱徒長苗、夏期高温時の日中の散布も避けてください。前身品のトマトの3試験では、葉縁の軽い縮小(生育に影響なし)が記録されています。
前身品の試験では、小型の天敵(カブリダニ類、寄生蜂、ハナカメムシ類)に直接かかると高い死亡率を示しましたが、散布後に放飼した場合の死亡率は0%でした。宮田(2009)は、カブリダニ類に影響が全くないわけではないが、圃場での試験結果から併用は可能と考えられるとしています。
直射日光を避け、密栓して保管してください。0℃以下での保管は凍結により効果が低下するため避けてください。
普通物に区分されています。
IRACの作用機構分類はなく、物理的に作用する気門封鎖型の殺虫剤です。メーカーは、化学農薬に抵抗性を発達させた害虫にも有効で、害虫が本剤への抵抗性を発達させる可能性はほとんどないとしています。
使用回数の制限がなく、他系統の殺虫剤・殺ダニ剤のローテーションの合間に組み込みやすい剤です。ただし卵に効かず残効も短いため、ハダニ類の防除では、卵にも効く殺ダニ剤や天敵との組み合わせで密度を管理してください。
長崎県のイチゴポット苗(さちのか)で粘着くん液剤を3回散布した試験では、1複葉当たりの雌成虫数が約2.6頭から約0.1頭に減り、無処理は約4.5頭まで増えました。関根(2016)の宮城県のイチゴ親株圃では、少発生時(5〜10頭/複葉)はデンプン液剤100倍の2回散布で低密度に抑えられ、著者は週1回程度の散布で低密度に抑えられると考えられるとしています。
多発生時(50頭/複葉以上)は3日程度の間隔での複数回散布が効果的とされています。
宮田(2009)のイチゴでの試験では、ワタアブラムシに対して澱粉液剤100倍の1回目散布直後から高い防除効果が認められた一方、オンシツコナジラミの幼虫に対する効果は低いものでした。前身品の委託試験では、きゅうりのアブラムシ類(ワタアブラムシ主体)は7試験中6試験で効果がやや低いという判定でした。前身品の技術資料は、アブラムシ類は散布ムラがあると短期間で再増殖するため、増殖期には連続2回散布や他剤とのローテーション散布が必要としています。
宮田(2009)のイチゴ(とちおとめ)での試験では、澱粉液剤100倍を3回散布したところ、発病度は13.9から0.3に下がり(無処理は25.4)、防除効果は高かったものの、3回目散布15日後には発病が拡大しました。
なす、パセリ、きゅうり、トマト、いちご、茶の41試験で、総合判定は「実用性が高い」8、「実用性がある」18、「効果やや低いが実用性はある」14、「実用性なし」1(茶・カンザワハダニの甚発生)でした。
卵には効かず残効も短いため、5〜7日間隔の連続2回散布や、他剤とのローテーションがすすめられています。薬液が虫に直接かからないと効果がないため、葉の表裏にむらなくていねいに散布してください。宮城県のイチゴ親株圃の試験(関根 2016)では、ハダニが多発している時は2回目の散布から6日後に密度が増えており、多発時は3日程度の間隔で複数回散布するのが効果的としています。
はい、あります。前身品の技術資料では、チャノホコリダニには効果がなく、アザミウマ類は実際の防除効果が弱く、コナガなどのガの幼虫にはほとんど効果が期待できないとされています。コナジラミ類は成虫に高い効果がありますが、中・老齢幼虫への効果は低いとされています。
使えますが、散布のタイミングに注意が必要です。前身品の試験では、チリカブリダニの雌成虫、オンシツツヤコバチ成虫、ナミヒメハナカメムシ成虫に直接かかると死亡率が80〜100%でしたが、散布して乾いた後に放した場合の死亡率はいずれも0%でした。残効がないため、先に本剤を散布して乾いてから天敵を放す、スポット散布にする、などの使い方がすすめられています。
影響はないとされています。前身品の試験では、100倍でセイヨウミツバチ(直接散布)、セイヨウオオマルハナバチ(散布後放飼)、カイコ(直接散布)の死亡率はいずれも0%でした。メーカーは、ミツバチ・マルハナバチなどの花粉媒介昆虫を使う栽培体系でも使用できるとしています。
はい、いくつかあります。かんきつ・みずなすは果実のある時期に使うと果実にリング斑の薬害が出るおそれがあるので避けてください(かんきつの登録は収穫後から萌芽前まで)。ボルドー液を散布した後、軟弱徒長苗、夏期高温時の日中の散布も避けてください。
薬液が乾いた後の雨は、効果に影響しません。ただし、散布前の雨で植物が濡れている時や散布中の雨は効果が落ちる原因になるので、そのような条件での散布は避けてください。
凍結させないように注意してください。0℃以下で保管すると凍結し、溶けた後も効果が落ちます。前身品の技術資料では、一般の化学農薬ほど保存性はよくないため、開栓した製品は一度に使い切るようすすめられています。有効年限は2年です。
ご使用に際して、製品ラベルに記載された希釈倍率・使用時期・使用回数・収穫前日数を必ず遵守してください。製品ラベルの記載と本ページの記載が異なる場合や薬害や安全使用上の注意などの記載がある場合は、製品ラベルの記載に従ってください。都道府県によってご使用を控えるよう指定されている農薬があるため、お住まいの地域の指針もあわせてご確認ください。河川・水路等への流入および周辺への飛散に注意し、使用後の容器は適切に処理してください。誤って眼または皮膚に付着した場合は、直ちに水で洗い流してください。体調に異常が生じた場合は、医師の診断を受けてください。直射日光および高温を避け、小児の手の届かない場所で保管してください。
