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最終確認:2026年10月3日
農薬登録情報:独立行政法人農林水産消費安全技術センター
技術情報:エフエムシー・ケミカルズ株式会社技術資料ほか
スポルタック乳剤は、プロクロラズを有効成分とする、FRACコード3のイミダゾール系殺菌剤です。稲の種子消毒1回で、ばか苗病・いもち病・ごま葉枯病の3つを同時に防除します。浸漬・吹き付け・塗沫から処理方法を選べ、チューリップやらっきょうの球根・種球消毒にも使えます。
病原菌の細胞膜の材料(エルゴステロール)をつくる工程を止めて、菌糸の伸長を強く抑えます。種もみの中までしみ込み、浸種中も菌を抑える濃度が保たれます。
ばか苗病・いもち病・ごま葉枯病を、種子消毒1回で同時に防ぐ
稲の種子消毒に使う剤で、1回の処理でばか苗病・いもち病・ごま葉枯病の3つの種子伝染性病害に効きます。兄弟品の技術資料に掲載された全国の試験では、ばか苗病・いもち病の防除価の多くが90〜100でした。
種もみの中までしみ込み、低い水温でも効果が安定
種もみの内部への浸透性に優れ、浸種中も玄米の中の濃度が、ばか苗病菌を抑える濃度より高く保たれます。浸種水温が低い条件の試験でも、安定した効果が確認されています。乳剤なので、消毒後に風乾する必要はなく、そのまま浸種できます。
浸漬・吹き付け・塗沫、4つの方法から選べる
稲の種子消毒は、1000倍24時間浸漬、100倍10分間浸漬、40倍の吹き付け(種子消毒機)、40倍の塗沫から選べます。乳剤で薬液が均一なため、消毒中の撹拌も不要で、大量の種もみもむらなく消毒できます。チューリップの球根腐敗病、らっきょうの乾腐病、アイリスの青かび病の球根・種球消毒、小麦の眼紋病の散布にも登録があります。
| 作物 | 適用病害虫雑草 | 希釈倍数・使用量 | 使用時期 | 使用回数 | 使用方法 |
|---|---|---|---|---|---|
| アイリス | 青かび病 | 400倍 | 植付前 | 1回 | 30分間球根浸漬 |
| チューリップ | 球根腐敗病 | 100倍 | 植付前 | 1回 | 15分間球根浸漬 |
| チューリップ | 球根腐敗病 | 200倍 | 植付前 | 1回 | 30分間球根浸漬 |
| チューリップ | 球根腐敗病 | 40倍球根1kg当り希釈液30mL | 植付前 | 1回 | 球根塗沫 |
| らっきょう | 乾腐病 | 300倍 | 植付前 | 1回 | 30分間種球浸漬 |
| 稲 | いもち病 | 100倍 | 浸種前 | 1回 | 10分間種子浸漬 |
| 稲 | いもち病 | 1000倍 | 浸種前 | 1回 | 24時間種子浸漬 |
| 稲 | いもち病 | 40倍乾燥種籾1kg当り希釈液30mL | 浸種前 | 1回 | 吹き付け処理(種子消毒機使用)又は塗沫処理 |
| 稲 | ごま葉枯病 | 100倍 | 浸種前 | 1回 | 10分間種子浸漬 |
| 稲 | ごま葉枯病 | 1000倍 | 浸種前 | 1回 | 24時間種子浸漬 |
| 稲 | ごま葉枯病 | 40倍乾燥種籾1kg当り希釈液30mL | 浸種前 | 1回 | 吹き付け処理(種子消毒機使用)又は塗沫処理 |
| 稲 | ばか苗病 | 100倍 | 浸種前 | 1回 | 10分間種子浸漬 |
| 稲 | ばか苗病 | 1000倍 | 浸種前 | 1回 | 24時間種子浸漬 |
| 稲 | ばか苗病 | 40倍乾燥種籾1kg当り希釈液30mL | 浸種前 | 1回 | 吹き付け処理(種子消毒機使用)又は塗沫処理 |
| 小麦 | 眼紋病 | 600倍 | 収穫30日前まで | 2回以内 | 散布 |
FRACコード:3(DMI殺菌剤、ステロール生合成におけるC14位脱メチル化酵素の阻害、イミダゾール系)
兄弟品(日産スポルタック乳剤、第17548号)の技術資料によれば、プロクロラズはイミダゾール系殺菌剤で、糸状菌の細胞膜の構成成分であるエルゴステロールの生合成を阻害して抗菌力を示します。胞子の発芽に対する阻害は弱いものの、発芽管の伸長と菌糸の生育を強く阻害するとしています。
同技術資料では、ばか苗病菌1.0ppm、ごま葉枯病菌4.0ppm、いもち病菌0.25ppmです。
同技術資料は、種もみ内部への浸透性に優れるとし、浸種中の玄米の中の本剤濃度が、ばか苗病菌のMIC(約1ppm)を上回って推移する図を示しています。
福島県の報告(前原ら 2022)は先行研究を引用し、ばか苗病菌のCYP51Bの2か所のアミノ酸変異(F511S、S312T)が確認されているとしています。中国浙江省の研究(Ge ら 2024)でも、耐性菌株で同じ二重変異が検出されています。山形県の報告(森谷ら 2023)は、DMI剤をFRACの分類で耐性菌リスクが中程度の薬剤としています。
同技術資料によれば、プロクロラズは1970年にドイツのシェーリング社が発明した殺菌剤です。日本では日本シェーリングと日産化学工業が開発にあたり、1977年から試験名「P-242乳剤」で日本植物防疫協会などの委託試験を行い、1990年3月31日に登録されました。
プロクロラズ25.0%の乳剤(淡黄色澄明可乳化油状液体)です。登録を有する者はエフエムシー・ケミカルズ株式会社です。
以下の技術資料の試験は、組成が同じ兄弟品(日産スポルタック乳剤、第17548号)の資料(試験成績は昭和52年〜平成2年)によるものです。当時の登録は稲の種子消毒のみでした。
ベンズイミダゾール系薬剤に耐性のばか苗病菌に対し、100倍10分間浸漬・1000倍24時間浸漬とも発病苗率0%、防除価100でした。
1000倍24時間浸漬で、浸漬水温15〜20.5℃、5℃、−1.2〜16.9℃のいずれの条件でも高い防除効果を示し、薬害はありませんでした。ただし同資料は、極端な低水温(5℃以下)での浸漬は避けるよう案内しています。
ばか苗病の防除価は、風乾の有無、撹拌の有無にかかわらず100でした。
40倍液を大型消毒機で乾燥種子重の3%量吹き付けた試験で、ばか苗病・いもち病は防除価100、ごま葉枯病は54でした。黒ボク土・沖積土・花崗岩風化土・人工培土のいずれの床土でも、ばか苗病の発病はありませんでした。同資料は、乳剤のため希釈が簡単で沈殿もなく、大量消毒機での付着量も安定するとしています。
茨城県・福島県・山形県の試験で、感受性が低下した菌に対してイプコナゾール・銅水和剤の防除価は99〜100でした。山形県では、ペフラゾエート乳剤は菌株によって効果にばらつきがあり、トリフルミゾール乳剤・ベノミル水和剤は効果が低かったとしています。
オランダから輸入されたチューリップ球根を、スポルタック200倍液に30分間浸漬すると、球根に付着したヒトの病原菌(アゾール耐性Aspergillus fumigatus)が分離される割合が無処理より減りました。この試験の対象は球根腐敗病ではありません。
本剤は普通物です。技術資料では、原体の急性経口LD50はラット♂3236mg/kg・♀2655mg/kg、製剤の急性経皮LD50はラット4915mg/kg超です。魚毒性はB類相当で、コイ(48時間TLm)2.0ppm、ミジンコ(3時間TLm)1.6ppm(製剤)です。
プロクロラズを含む農薬の総使用回数は、稲・らっきょう・チューリップで1回、小麦で2回以内です。必ず最新の適用表で確認してください。
吹き付けは種子消毒機を使い、均一に付着させて乾燥させます。塗沫は容器内で種もみを撹拌しながら薬液を滴下し、均一に付着させます。
軽度の初期生育遅延が出ることがありますが、その後回復するので通常の管理を続けてください。粒子が細かく水分の少ない人工培土を使う場合は、根上がりを助長するおそれがあるので、播種時に十分灌水し、覆土を十分にしてください。
もみ枯細菌病・シンガレセンチュウには効果がないため、専用の剤と混用してください。
原液は眼に強い刺激性があるので、薬液調製時は保護メガネを着用してください。調製した液も眼に弱い刺激性があります。皮膚にも刺激性があるので、不浸透性手袋・長ズボン・長袖の作業衣を着用してください。消毒後の種もみは、食用・飼料用にしないでください。
魚介類に影響を及ぼすおそれがあるので、浸漬後の残液は河川などに流さないでください。
普通物に区分されています。
FRACコード3(DMI殺菌剤)の単剤です。山形県・茨城県・福島県などで、プロクロラズの効きにくいばか苗病菌が確認されています。感受性の低下が疑われる場合は使用を中止し、他の剤を使うよう茨城県は案内しています。
同じFRACコード3のペフラゾエート、イプコナゾール、トリフルミゾールを含む剤もありますが、各県の試験では、感受性が低下した菌に対する効果は剤によって異なりました。地域の防除指針を確認し、関係機関の指導に従って剤を選んでください。品種ごとに浸種容器を分けるなどの基本技術の励行も推奨されています。
本剤は糸状菌(カビ)による病害に効く剤です。稲のもみ枯細菌病(細菌)やシンガレセンチュウには効果がありません。兄弟品の技術資料では、リゾクトニア属菌・リゾプス属菌による苗立枯病にも効果は期待できないとしています。
はい、プロクロラズが効きにくいばか苗病菌が各地で確認されています。2015年以降、山形県・茨城県・福島県で確認され、秋田県・新潟県・長野県でも報告があります。山形県では効きにくい菌が県内全域に広がり、本剤と同じ成分の乳剤の防除価が4〜82にとどまった菌株もありました。30年以上の連用が原因と考えられています。
地域の防除指針を確認し、効き目が落ちたと感じたら使用をやめて別の剤に切り替えてください。
各県の試験では、イプコナゾール・銅水和剤(テクリードCフロアブル)の効果が高かったとされています。山形県・茨城県・福島県の試験で、効きにくい菌に対して防除価99〜100でした。地域の病害虫防除所や普及センターの指導に従ってください。
登録はありますが、ばか苗病・いもち病と比べると効果にばらつきがあります。兄弟品の技術資料の試験では、ごま葉枯病の防除価は5〜100と幅がありました。
いいえ、効きません。もみ枯細菌病やシンガレセンチュウを防ぐには、それぞれ専用の剤と混用してください。兄弟品の技術資料では、これらの専用剤との混用で効果・薬害の心配はないとされています。
軽い初期生育の遅れが出ることがありますが、その後回復します。兄弟品の技術資料では、田植えやその後の生育、収量には影響がないとされています。浸漬時間は必ず守ってください。高い水温では吸収量が増えて、生育抑制の原因になるおそれがあります。
消毒後は水洗いせずに浸種します。種もみと水の容量比(浴比)は1:2とし、開始後2日間は水を換えないでください。河川・湖沼・ため池で浸種してはいけません。極端な低水温(5℃以下)での浸漬は避けてください。
原液は眼に強い刺激性があるので、薬液を調製するときは保護メガネを着用してください。本剤は魚介類に影響を及ぼすおそれがあるので、浸漬後の残液は河川などに流さないでください。消毒した種もみは、食用・飼料用にしないでください。
他剤と混ぜるときは、先にこの乳剤を薄めてから水和剤・フロアブル剤を加えます。少量の水に両方を同時に入れて練らないでください。
ご使用に際して、製品ラベルに記載された希釈倍率・使用時期・使用回数・収穫前日数を必ず遵守してください。製品ラベルの記載と本ページの記載が異なる場合や薬害や安全使用上の注意などの記載がある場合は、製品ラベルの記載に従ってください。都道府県によってご使用を控えるよう指定されている農薬があるため、お住まいの地域の指針もあわせてご確認ください。河川・水路等への流入および周辺への飛散に注意し、使用後の容器は適切に処理してください。誤って眼または皮膚に付着した場合は、直ちに水で洗い流してください。体調に異常が生じた場合は、医師の診断を受けてください。直射日光および高温を避け、小児の手の届かない場所で保管してください。
